おいかけて、つかまえる | ナノ


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ボクの話を聞いてくれる?

目を見て聞けばアオちゃんは「はい」と小さく頷いてくれた

今なら…今なら誤魔化せるかも知れない
話の内容を、告白じゃなくて…

臆病な部分が顔を覗かせる

ダメだ、しっかりしろ!
逃げるなんて、本来自分らしくないじゃないか


目の前にいる大好きな女の子をボクはどうしても手に入れたくて仕方がない癖に

さっきだって、キスをしようとしたりしてボクは…

結局今、言わなかった所でもう気持ちを抑えるのは無理に等しいんだ

アンディも…フランクも行けと言ってる
ありがとう、力を借りるよ!


「アオちゃんボクは…どうしてもキミが欲しくて仕方がないみたい」

「へ?」

「アオちゃんの一生懸命な所や、優しいところ…大好きだよ。いつも練習を見に来て応援してくれるのも本当に励みになるんだ。」

1度、想いを口にすればもう止まらなくて
今まで言えなかったのが嘘みたいに次から次へと言葉が出てきて

もう全部、全部伝えてしまおう

「キミのこの小さな手も、キラキラしててサラサラの髪の毛も白い頬も…いつも向けてくれる笑顔も…全部が可愛いくてたまらない」

「い、ずみだ先輩…」

アオちゃんの手が震えてて
震える…その意味はわからないけれど…

そっと彼女の手を包見込んでまた口を開く

もう少し聞いて欲しいんだ
ボクも想像以上なんだよ、ここまで溢れて止まらないなんて

「もう、わかってくれたとは思うけど。この際だからハッキリ言わせて貰うよ」

「はい」

「ボクは…ボクはアオちゃんが好き。衝動的に抱きしめてしまう位…一緒にいたらまた抱きしめたくなると思う…いや、絶対に」

「私も…抱きしめて欲しいです」

「本当にキミは…その言葉、良い風に取っても構わないかい?」

構いません、と小さな声だけどしっかり聞こえて…

さあ、肝心な事を言わなければいけないな

「アオちゃん、ボクの彼女になって下さい」

その言葉を言い切る前にアオちゃんが飛び込んで来て

戸惑うことなくボクも…アンディとフランクもきちんとアオちゃんを受け止めた


「彼女になりたいです…私も先輩が好きなんです」

その言葉を聞いて力が抜けそうになったけど、情けない姿は見せたくなくて

「ありがとう、嬉しいよ。好きだよ、アオちゃん」
「嬉しいです、本当に本当に大好き…」

お互い顔を見合わせれば、そのまま吸い込まれるかのように近づい…た

んだけどカタカタ音がしてボク達はドアの方に目を向ける


「ユキちゃん、き、ききキス!キスするよ!塔ちゃんが」
「バッ…拓斗、しっ!!」


「ユキ、拓斗?」

「見つかったじゃねーかよ、バカ!」
「あ、ごめんねユキちゃん」

あの二人…何時からいたんだろう
ドアを開ければバツの悪そうな顔をした2人が立っていて

「黒田先輩と葦木場先輩、お疲れ様です!」

そう笑うアオちゃんには本当に敵わないな…
気分がいいのもあって、2人には不思議と怒りは湧いてこなかった


その後、アオちゃんとファミレスに行く約束をしてるのを知った2人は何故か着いてきて…

「塔ちゃんの告白凄くかっこよかったよー」
「葦木場先輩も思いました!?凄くかっこよかったです〜」
「うん、ボクは君が欲しくて仕方ないってさあ」

無邪気に話してるけど…アオちゃんは気にしてないからいいけど…

最初から聞いていたのか!

横目でユキを見ると苦笑いをして「まぁ、でも良かったな」って肩を叩かれた

「本当にお前らじれったかったからな。やっとかって感じだぜったく…」
「そうだったんだ…おかげさまで上手く行ったよ」
「知ってるつーの!」


キスはしそびれたけれど、でもいいんだ
また、そのうちでさ

彼女…か

そうか、そうなんだ…
今までよりも、もう少し気安く触れる事が出来るのか
気持ちだって隠す必要もないし

それにしても…

アオちゃん、拓斗とちょっと距離が近すぎないかい?
そうそう!
今日のスカートの事もきちんと言っておかないと!

「アオちゃん、拓斗…少し近いよ」

ね???と、言えばササッと離れる2人

「あと、アオちゃん。言おうと思ってたんだけど、眠くなるのは仕方ないけど、制服姿であんな風に寝るのはダメだよ」

「はい、すみません」

「わぁ〜出た〜塔ちゃんのかあちゃん…」
「あーあ…アオもご愁傷さま」

「そこの2人にも言っておきたい事がある」

「「げっ」」


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今までの胸の内は全て出したからか、頭も心も軽い

前を歩くチームメイト且つ友人を見て、祝福してくれた事を思い出すと有難い気持ちになる

隣を向けば…

「どうしました?泉田先輩」

ニコッと首を傾げるアオちゃんが可愛くて
…この子と、ちゃんと気持ちが通じあったのかと思うとまた色んな感情が湧き上がってくる

「いや、可愛いなって」
「ま、また先輩はそんな事を言う!」

少し怒った顔をするのは照れ隠しって事、もうちゃんとわかってるよ

「…でも嬉しい…大好きですよ、先輩」

そうはにかんで言うアオちゃんにボクはやっぱり敵いそうもない


「おいコラそこの2人!惚気てんじゃねーよ!聞こえてんぞったく!!」
「ほー…少女漫画みたいだねぇ」

「はは、すまない」

今ボクは気分が最高に良いから、2人に何言われようが全然平気だと思う


本当に今日は最高の1日だったな

アオちゃんが恋人になった明日は一体どうなっているんだろう

おはようの挨拶ですらも全部…
もっと特別になってるのかもしれないとボクはまた胸を高鳴らせていた






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