01.一目で恋に落ちた

親の転勤で箱根に越して来てまだ二週間あまり

高校生になって仲良い友達も沢山出来て、楽しい日々を送っていた
高校生活最後の三年生も一緒のクラスがいいね、と友達と話したりしていた2月末

四月付けで父が転勤になるから修了式が終われば引越しだと言われ、転校する事が決定して友達とは涙なみだのお別れをしたのはまだ記憶に新しい

高校の中途編入は抵抗があったけど、1人で残って生活諸々どうにかなるなんて私には無理だと思ったから、親に素直に着いて来た

家から近いのと校風が良さげと言う理由で箱根学園の編入試験を受けて無事に受かって、晴れて4月から箱根学園の生徒となった


知らない土地に友達もいなくて不安ではあるけれど何とかなるだろう

とポジティブに考えて、新たな学校へと向かう通学路

ボーっと歩いていたからいけなかったんだけどいきなり後ろから風を感じ、振り返る間もなく私の横を数台の自転車がもの凄いスピードで通り過ぎた

「わっ」

び、びっくりしたぁ
思わずカバンを落としてしまった
その弾みで付けていたぬいぐるみのチェーンが外れて飛んでしまった

あれ?何処だろう?
前の学校の友達に貰った大切なモノだからなくなったら困る!なんて探していると

「探しているのはこれか?」

その声に驚いて顔を少し上げて、その人の手もとを見る
探していたモノでホッとする

「あ、はい、これです!ありがとうございま…す」

顔を見てお礼を言った
……んだけど、とても綺麗な顔をした人でびっくりして途端に恥ずかしくなった
語尾が小さい声になってしまって申し訳ない気持ちになる

「急に横切った自転車に驚いたのだろう。すまなかった」

「い、いえ!そんな!すみません、ボーっとしてたんです。あんな速い自転車初めて見て…すみません」

この人はいつ見ていたんだろう
横切っていった自転車は赤とか黄色とかだった
彼の自転車は恐らくこの白い自転車
だから彼に驚いた訳じゃないのに
後ろから見ていたのかな
彼の自転車の気配を感じなかったし止まったのも気づかなかった

「そうだったのか。なら尚更すまなかったな。この入学の時期はもう少し配慮するように言っておくよ」

慣れてない生徒ばかりだからなと少し真剣な顔で言うこの人に、真顔でもかっこよくて不覚にもドキドキした

「いえいえ!とんでもないです!本当にあの、ぬいぐるみ…ありがとうございました」

私が頭を下げたら肩をポンと軽く叩かれて

「ちゃんと見つかって良かった。学校まで気をつけてな」

と優しくて綺麗すぎる笑顔で言われてもうその瞬間にはもう嫌でも気づいてしまった

完全に一目惚れだ、と

一目惚れだけど、誰だかわからないのに

箱根学園とジャージには書いてあるから同じ学校の生徒だというのがわかったのがせめてもの救いで
学年も知らないし…せめて名前を聞こうと思ったら「ではな」と彼は自転車に跨り颯爽と走り去って行った


さっきの人達みたいにビューンと音を鳴らして風を切るような走りじゃなくて、静かすぎるくらいにスッと音もなく走っていったもう遠くにいる彼の背中を見ながら、また会えたらいいなと心の中で強く願った





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