13.あかいろ2 私の鍛え上げた腕の筋肉で、多少ぽっちゃりとしているが小柄なロングボトムくんを横抱きにして、瞬身の術を使った。寮の入り口に一番近い廊下まで来たところで彼を起こし、また改めて彼自身に『君は私と一緒に両足で跳ねて帰ってきた』と暗示をかける。 「…立てる? ロングボトムくん」 「え、あ…ここは…僕は、どうして…」 「マルフォイに『足縛りの呪い』をかけられたんだよね?」 「…あ、そうだ。…僕は、それでここまで…跳ねてきた」 「太ったレディの肖像画まで、あともう少しだよ。頑張れる?」 「…う、うん」 肖像画を潜って、その先の穴を私が補助しながら二人で登る。やっとの思いで談話室まで着くとその場にいた皆が彼を見て笑い転げたが、ハーマイオニーとレイリが周りを睨めば静かになった。『アクシオ』と念じれば杖が手の中に飛ん来る。そのまま呪いを解く呪文を唱えれば、彼の両足はパッと離れて泣きながら「ありがとう」と言った。 「一体ネビル、どうしたんですか?先輩」 「…あぁ、どうやらマルフォイに『足縛りの呪い』をかけられたらしい」 ハーマイオニーに尋ねられて私が答えれば、マルフォイ嫌いな彼ら、ひいてはスリザリン嫌いな彼らは口々にマルフォイ達に対する悪口を言い始めた。 「図書館の外で出会ったの。 誰かに呪文を試してみたかったって…それで、それで 僕は勇敢じゃないって…グリフィンドールにはふさわしくないって…」 ネビルは泣きべそをかきながら、声を詰まらせた。私は彼のその姿に既視感を覚えて、自然とネビルの背中に手を添えて擦っていた。その動作につられて、みるみるうちに涙を目に溜めていくネビル。ハリーがポケットを探って蛙チョコをネビルに渡し、続けて言った。 「マルフォイが十人束になったって君には及ばないよ。 組分け帽子に選ばれて君はグリフィンドールに入ったんだろう?」 「…うんっ」 「マルフォイはどうだい?あいつは腐れスリザリンにいれられたよ」 蛙チョコの包み紙を開けながら、ネビルは涙で潤んだ目でかすかに微笑んだ。私はそれを見て、ネビルの背中から手を離した。 「ハリー、ありがとう。…それと、レイリ先輩も」 「いえいえ、ロングボトムくんの力になれたなら良かった」 「僕、もう寝るよ…はい、ハリー。カードあげる」 「ありがとう、ネビル」 「じゃあ、最後まで見届けたし…私も引っ込むよ。おやすみ、皆」 「「「おやすみなさい!」」」 談話室に残る三人組に手を振って、男子寮の階段をとぼとぼと上るネビルに声をかけた。「…ロングボトム、次は怖くても立ち向かうんだよ?」と二段登ったところで私と殆ど身長差のなくなった彼の頭を撫でた。 顔が近かったからだろうと思うが、やっぱり頬を真っ赤に染めたネビルは、かわいらしかった。 20130810 title by MH+ 13/15 [top] |