5.あのひと2 流し台へバケツに入った水を流し、空っぽになったバケツを振り回す双子は「重たかったなぁ」とか何とか言いながら片付けをしていた。 アンジェリーナは心配そうに眉を下げ「待ってようか?」と言ってくれたが、それでは彼女の貴重な休み時間を無駄にしてしまうからと言って私は断った。労るように肩を撫でられ彼女は教室を出て行く。 「なぁ、」 「…なに、ジョージ?」 「優等生のレイリが呼び出しだなんて…」 「一体何したんだ?」 「…それは、私が教えてほしいよフレッド」 項垂れる私をよそに「ま、頑張れよ!」と肩をたたいて教室を出て行こうとするフレッドに、私の腕から荷物をするっと抜いて持って行ってしまうジョージ。「ありがとう」と彼に言えば「いえいえ、お嬢さまの為なら」と芝居がかった調子で手を取られた。 明るい廊下の先でフレッドは「骨は拾っておいてやるからさぁ!」と大声で言い私に向かって手を振っている。その隣りでは片割れのジョージが私の荷物を持ったまま、同じような顔をして手を振っていた。はぁ、と溜息を着いても仕方がなく、私は暗い道を一人で歩く。 「教授。グリフィンドールのレイリ・ウチハです」 「入りたまえ」 「失礼します」 扉の前でそう乱れてもいない服装を整えノックをした。ぎぃと音を立てて開いた重たい扉の向こうには、今日提出された薬の入った試験管を点検するスネイプ教授が見えた。扉の側で遠慮気味に立っていると、眉をひそめた教授に目で「こっちに来い」と促されたので、ローテーブルを挟んで並ぶ二つのソファーまで近寄った。 「座れ」 「…はい」 重たい沈黙が流れる。これは新種の拷問だろうか?…教授から発せられる独特の緊張感と威圧感に、私は自分の体積が縮んでいくような気がした。 20130810 title by MH+ *もうちょっと 5/15 [top] |