4.あのひと 最近は寒い日が続き、ベッドから起き上がることすら億劫だった。私は熱い夏も嫌いだが、冬の寒さも好きではなかった。アンジェリーナはこんな寒い日も、朝からクィディッチの練習に出ており、彼女は本当に勇ましいなぁと尊敬している。 朝食の席にて、練習を終えてこちらへ来るであろう彼女の為に隣りの席を開けておくと、そこには思いも寄らぬ人物が…なんと双子の片割れフレッドが座った。どうしてフレッドかと分かるのかと言えば、それは勘だ。だけど、きっと合っているだろう。彼はフレッドだ。 「おはようレイリー」 「…おはよう、フレッド。 ねぇ、そこアンジーの席なんだけど」 「まぁまぁ、そんなこといいじゃないか」 「おはよう、レイリ。僕の片割れがすまないね」 「本当だよ、ジョージ…」 後から来たジョージは私の正面の椅子を引きそこに座った。私が待っていたアンジェリーナは、双子が揃ってパンにジャムを塗り終える頃に現れた。乱れた髪を整えながら、颯爽とジョージの隣りに座るとオレンジジュースを一気飲みした。(あ、)今ちょっとだけ彼女に惚れた。 *** 今日も今日とて一限目の魔法史の授業では、双子達を含む三年グリフィンドールのクィディッチ代表チームのメンバー達は熟睡していた。朝早くから身体を動かすことは健康的ではあるが、やはり学生の本分を阻害してしまう可能性のあることはなるべく避けるべきだろうとも思う。 隣りの席ですやすや眠るジョージの寝顔を眺める。頬を羽ペンの羽の部分でくすぐると、ジョージは無意識下で手で羽を除けようとする。試験前にこの科目のノートを「見せてくれ!」と懇願してくる彼らを思い浮かべながら、私は欠伸を咬み殺した。 次の魔法薬学の授業では、目を覚ましてちゃっかり体力全開の双子がやらかしてくれた。またグリフィンドールから二点減点された。このいつもの光景に頭を痛めるアンジェリーナを横目に、私は自分のことに集中した。 魔法薬学は、私の中でも得意教科と言っていいほどの成績をこれまで修めてきている。確かに、理不尽なまでに私達の寮から減点をするスリザリンの寮監であるセブルス・スネイプ教授には腹を立てることはあるが、彼の理論的なところはむしろ好まれるところであるし、薬や毒の調合なども前いた場所で経験してきたから、作業は別段苦にならない。 「完成した者は、ラベルをきちんと確認し前に提出して帰れ」 スネイプ教授は、この教室の隅っこの方にバケツを持って立たせた双子を睨んでから、いつものトーンでそう伝えた。まだ完成していない生徒たちは、急ピッチで作業を進める。私は完成した薬を提出用の試験官に入れ、蓋を閉じ、名前の書いたラベルを貼るところだった。 クラス全体の様子をじろりと見渡してから、思い出した様に再び口を開く教授。その後続けられた言葉に、私は背筋が固まった。部屋の隅っこの方から、げらげらと双子が笑う声が聞こえて思わず私は彼らを睨み付けた。 「…それと、ミス.ウチハは話がある。授業後、我輩の部屋に来い」 一体何を言われるのやら…私は双子の様に悪さはせず、むしろ優等生としてこれまでやってきたと言うのに!しかも、呼び出した相手が私の属する寮を嫌うスネイプ教授だと思うと、冷や汗が流れた。 20130810 title by MH+ *続く 4/15 [top] |