万物流転 | ナノ
14.みぎうで
相変わらずのビンズ教授の教える魔法史では、たくさんの生徒達が夢の中に旅立って行った。私の前に席を取る双子も、隣りの席のアンジェリーナも例外なく教科書を立ててその後ろで隠れるようにぐっすり眠っている。

魔法史。その名の通り魔法界の歴史を勉強する学科だ。私はこの学年で唯一、眠らず真面目に!教授の…まるでお経のような講義をきちんと聞いているだろうと自負している。何故なら、それを証明する証拠として、去年一年間魔法史のテストでは学年トップを保持し続けたからだ。

人は自分が一番になれることを知ると、それが得意なのだと勘違いをしてそのもの自体が好きになる…単純な生き物なのだ。だから私は、魔法薬学の次に魔法史が好きな教科になった。

加えて、皆が眠ってノートを取っていないので、試験前には私にノートを見せてくれ!と頼みにくる同学年の生徒が多数出現する。人に頼られ、また、人の役に立てると言うのがなんとも小気味良く、私はさらに授業を受けるのに熱が入るのである。

授業が終わり、マクゴナガル女史の待つ変身術の部屋へ行き席につけば正面の大きな教卓の前に立っていた女史に手招きをされて、昼食が済んだら三年生の『魔法生物飼育学』の授業にハグリットの助手として参加してきなさいと言われた。

監督生はこういう仕事もこなすのですか?と彼女の問えば「ハグリットはミス.ウチハだから、助手をお願いしたのですよ」とちょっぴり微笑まれた。

確かに、前任のシルバヌス・ケトルバーン教授からは「私が退職した後には、君にこの庭を預けよう」と言われるほどには信頼を得ていたが、私で大丈夫だろうか?なんとも自分では役不足な感じがして、私は変身術の授業中、ケトルバーン教授から教わった『魔法生物と接する時の大三約束』をぶつぶつと呟いていた。

いつものメンバーで昼食を済ませ、午後からは私だけが別行動になるので薬草学に向かう他の五人(双子とリーからはサボりかぁ?とからかわれ、そんな双子の頭をアンジェリーナがはたいた)を見送って、城外へ出た。

ハグリットの小屋まで行くと、彼はそわそわとその前で立っており私の姿を確認すると大きく手を振った。私は少し小走りで彼に近づいて行き「よう来てくれたレイリ!ほんじゃ、ちょっくら行くか」と嬉しそうなハグリットを見てつられて笑った。

20130815
title by MH+
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