万物流転 | ナノ
7.そうなん4
中二階の部屋までハーマイオニーを送り届けた後、廊下でハリーと会った。今はバーに行かない方がいいよと忠告をすれば、ロンが昼間に買ったネズミ栄養ドリンクを探しに行きたいのだと彼は言う。「これのこと?」とポケットから、実はテーブルの下に落ちているのを見つけて拾っておいた茶色の小瓶を取り出せば、ハリーの目は輝いた。

「どこでこれを?」と尋ねられたので、テーブルの下に落ちてたと伝えれば「ありがとう」と言って受け取った。そして、二階につながる階段を登りながらハリーの話を聞くと、どうやらパーシー先輩の主席のバッジも失っているらしい。

そしてその踊り場に差し掛かった時、暗がりに息を殺してヒーヒーと笑っている双子を発見した。彼らを見た瞬間、先輩のバッジは確実にこいつらが持っていると私の直感が言った。

「フレッド・ウィーズリー、並びにジョージ・ウィーズリー。
 今直ぐそのバッジを元通りにして先輩に返したら罪には問わない」

双子は私の声に震わせていた肩をぴたりと止めて振り返った。隣りのハリーは不思議そうな顔をして、私達を見ていた。いつになく強気な口調に、ジョージが「どうしたんだいレイリ?」バッジを握るフレッドが「まるでこれの持ち主の『石頭』みたいな喋り方じゃないか!」と立ち上がった。

「フレッド…元通りにするの?しないの?
 ほら、ジョージも固まってないで直しなさいな」

つれない返事を寄越した私に「ちぇー」と言った双子は、しぶしぶ『石頭』から『主席』にバッジの文字を戻した。手先だけは無駄に器用なんだから…。ふぅ、と溜息をついた私は、フレッドの手からバッジを受け取りハリーに声をかけて階段を登って行こうとした。

「なぁなぁ、」
「ちょっと待てよ、レイリー」

不満そうな声で私の名前を呼んだのはフレッドで、くいくいと上着の裾を引っ張って私が階段を登るのを止めさせたのはジョージだった。「んー?どうかした?」と、いつものように返した私にあからさまに安心した双子は、人懐っこい笑顔を浮かべ「おやすみ」と声を揃えて言った。





「双子のパーシー先輩に対しての悪戯好きには、困ったものね」

私がぼそりと呟いた言葉に「…そうですね」ハリーは曖昧に笑って返事をしてくれた。九号室は私の部屋。十号室がハリーの部屋。そして、十一号室がロンと先輩の部屋で、中からはまだ怒っている声が聞こえてくる。

あー面倒だな。この部屋には入りたくないなぁ…と言う私の心の声が聞こえたのだろうか?ネズミ栄養ドリンクと、主席のバッジとをそれぞれの手に持ち部屋の外にいるハリーと私は苦笑いを零したのだった。

20130815
title by MH+
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