万物流転 | ナノ
19.ふたりで
出発の日の朝はやはり忙しかった。起きるのが遅い双子だって、鶏の声で一緒に起きてきたのに、キングス・クロス駅に着いたのは、なんと特急の出発時刻までもうまもなくの頃だった。

つかつか歩くパーシー先輩に続き、こんな時でも「レディーファーストですよ」「お嬢さん」と私に対してふざけたことを言う双子に、モリーさんの目は三角になった。ちなみにジョージ、フレッドの順でこの台詞を言った。

するりと策を抜けてカートを押し特急の係員に大きな荷物を預ける。私の場合、荷物は大きいトランクと中くらいの革の鞄がふたつ。女性にしてはかなりコンパクトに軽量化されていて、今年入学するジニーよりも持って行く荷物の量は少なかった。

そして、モリーさんにジニーのことを任せられて特急は出発。空いているコンパートメントを見つけ出しやっと一息ついたところで、私は重大なことを自分がすっかり忘れていたことに気が付いた。

「どうかしたの?レイリさん」
「…いや、何でもないよ、うん」

苦虫を噛みつぶしたような顔になっているだろう。ジニーはモリーさん手作りのウィーズリー家特製のクッキーを頬張りながら私を不思議そうな目で私を見ていた。

ひやりと冷たい汗が背中を伝う。ハリーとロンは、マルフォイ家の屋敷しもべであるドビーに壁を閉じられてあのトルコ色のフォード・アングリアで空を飛び学校に植えられている『暴れ柳』に車ごと突っ込むんだった。

思い出したところで、今更私が手を出してもどうしようもないかぁと、流れる車窓に溜息をつく。まぁでも、特急にハリーとロンの二人が乗っていないこと。もしかしたら、例の乗り物で飛んでくるかもしれないことを学校に到着したら、誰か手のあいている先生に告げておこう。

20130812
title by MH+
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