万物流転 | ナノ
16.こうそく3
地上に出た私達は、一時間後に『フローリシュ・アンド・ブロッツ書店』で待ち合せすることを決め、それぞれ自由行動となった。双子はこの人ごみの中から目敏く悪友リー・ジョーダンを発見し三人揃って人の中へ消えて行った。夫人とジニーは中古の制服を探すらしい。先輩は新しい羽ペンを買いに行くそうで、私もご一緒した。

歩きながら思うことは、何気に先輩は紳士だと言うことだった。学校ではツカツカ周りの者など気にしない雰囲気で目的意識を持って生活している(そんな風に私には見えていた)先輩は、歩くペースの遅い私に合わせて歩いてくれたし、段差があれば声を掛けてくれた。…少し見直しました。

店に着き、目ぼしい商品をチェックしながら雑貨店をぐるりと見て回る。きっと気に入っているメーカーがあるのだろう。早々にパーシー先輩は羽ペンを購入し、手のひらサイズの本を読むのに恐ろしく没頭していた。私も隣りで気になる背表紙を手に取り読んでいると、急に視界が暗くなる。

「だーれだ!」

びっくりして身を硬くすると、聞こえてきたのは同級生の男の子の声だった。雰囲気でパーシー先輩がこっちを見ているのを感じながら、私は本を閉じて口を開き私に目隠しをする彼の名を言った。

「…ディゴリー?」
「正解。久し振りだねレイリ!」

灰色の目をきゅっと細めて微笑む彼は、セドリック・ディゴリーと言う。言わずもがな…あのセドリック・ディゴリーである。どうしてハッフルパフの彼と一端のグリフィンドール生である私が親しげに話をしているのかと言えば、山よりも高く、海よりも深い訳があるので察してほしい。

しばらく世間話をしてから、彼はちらりと先輩を一瞥し「君が良ければ、外に出ない?」と誘われて、私は笑顔の彼に断り切れず、しぶしぶパーシー先輩に別れを告げた。

店を出て、このハンサム君と二人でいるのを他の生徒(特に彼を好いている女子生徒)に見られてたらいやだなぁと思いながら、溜息が出そうになるのを堪える。

「ねぇ、さっき一緒にいたのって君のところの監督生の…」
「あぁ…パーシー・ウィーズリー先輩よ」

「君たちって仲良いの?…学校では一緒にいるの見たことがないけど」
「あぁ、今日はたまたま一緒に羽ペンを買いに行ったのよ」

「へぇ…そうなんだ。…どうして一緒に行くことになったの?」
「それは、買い物の目的が一緒だったからかな」

やけに聞いてくるなぁ…と思いながらも彼の疑問には丁寧に答えていく。クィディッチのこともあり、彼に対抗心を燃やしているフレッドは彼のことを『二つの言葉をつなげる頭もない』なんて皮肉って言ってるけど、学校でのあの寡黙な優等生キャラは、もしかしたら彼がそう演じているのかもしれない。…なんて空想を広げながら、気持ち肩を縮め、意図的に気配を薄くして、私は彼の隣りを歩いた。

20130811
20160218 加筆
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