万物流転 | ナノ
1.れんらく
何通もの手紙のやり取りをして、フレッドとジョージにお宅へは泊まりに行けないとあれほど言っておいたのに…目の前にいつものにやけた顔で現れた双子を見て、私はひっそりと溜息を吐いた。

「こんな時間にレディーの部屋へ訪れるなんて…あなた達どうかしてる」

「まぁまぁ、そんな風に言うなって!」
「折角、レイリは可愛い顔してるのに…」
「「そんな怒った目してるのは勿体ない!」」

あの双子だとしても『可愛い』と異性の二人から言われて…お世辞と知っていながらも、少なからず嬉しく感じた自分の頬に赤みが差すのが分かって、照れ隠しに私は声を張り上げた。

「おだてたって、ムダ!…ごほっごほ」
「ほらレイリ、これ羽織って?」
「ありがとう、ジョージ…」

私は顎の下にしていたマスクを摘んで、しっかりと口と鼻を覆った。双子にこの風邪を移してしまったら大変だ。私が彼らの家に泊まることを渋っていたのは、休暇中にかかった風邪が治らないことも理由にあった。

「本当に風邪ひいてたんだね」と自分の上着を私に貸してくれたジョージは言う。「だからお誘いを断っていたのに…」じーっと私よりも背の高い彼の顔を睨み付けていたら、隣りに立つ彼は「潤んだ目に上目遣いとか…何かもういろいろアウトだよレイリ!」だなんて、訳の分らないことを言いながらバッと左手で顔を覆い隠した。

「荷物はこれで全部かー?」
「えぇ、そうよフレッド…ねぇ、本当に連れて行く気?」
「「勿論のロンさ!!」」

さぁさぁ!と荷物を持ったフレッドと腕を掴むジョージに急かされた私は、慌ててこの部屋の施錠を済ませなければならなくなった。多少強引ではあるが、彼らは私を連れ出すのに成功したのである。

移動の最中、ふらつきながら歩く私に「怒るなよ」と言って、ジョージが私を横抱きにしたのは、記憶から消し去りたいくらいに恥ずかしかった。なので、そんな恥ずかしがる私を見て爆笑するフレッドを、身体が全快したらはっ倒そうと思いました。

余談。フレッドに対して復讐の炎をたぎらせる私は気付きませんでしたが、恥ずかしがる私を見て、さらに恥ずかしくなったジョージも顔を真っ赤に染めていたそうですよ。

20130811
title by MH+
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