万物流転 | ナノ
53.こうかい2
嫌がらせメールはそれから一週間、途切れることなくハーマイオニーの元に届けられた。同じ女性として、アリシアとアンジーが彼女に届く悪質な手紙に目を三角にして手紙を運んでくる梟にまで威嚇していた。彼女達に梟に対する威嚇を止めさせるように言っていたが、私も同じ気持ちだった。

「そのうち収まるよ」とハリーがハーマイオニーを慰めるように肩を撫でている。それを横目に見ながら「梟便受け取り拒否にした方がいいんじゃないかしら」と言うアリシアにアンジーが頷いた。

ハーマイオニーはあの一件以降、もうわざわざ開封してやることはなかったが、中には『吼えメール』で送りつけてくるあくどいものがあった。グリフィンドールのテーブルでそれが爆発すると、大広間全体に響き渡る音量で彼女を侮辱する言葉が吐きかけられる。

彼女の顔がくしゃりと歪むのを見た瞬間、私はもう我慢ならなかった。アリシアとアンジーが立ち上がり杖をローブから取り出すよりも早く、私は椅子を引き倒す勢いで立ち上がる。

『おまえは悪い女だ!ハリーを騙している!汚らわしい!』

その衝動のまま怒りに身を任せ、ぐちぐち喚き散らす吼えメールに最大火力の豪火球を噴き出していた。ほぼ無意識だった。あのうるさいのを消さねば、あの子を守らねば!それだけだった。

ゴウゴウと噴き上がった火球は、天井近くまで上り詰めると、パチパチと花火のように火の粉が弾けて飛散した。大広間に火遁の熱風が渦巻く。肌が焼かれるような熱気を感じる。

「今のは一体…」
「オイ!見たか!?」
「バケモノ…!」
「あいつ、何をしたんだ!?」
「口から火を噴いたぞ!」
「ドラゴンかよ」

どこかのテーブルからざわめきが聞こえてきた。私は今、大広間中の視線をかっ攫っていた。目下には、驚きや怯え、恐れなどの表情を浮かべた人がいた。ちらりと私と目が合うと、恐怖で喉を引き攣らせたような悲鳴を上げて顔が逸らされる。

(あぁ、やってしまった!)

私は友人や後輩の制止の声も無視して、大広間を出た。走って走って走って、一人になれる場所を探した。そして見つけた。トイレだった。久し振りの火遁に口の端を火傷した。涙が火傷に染みる。今まで演じ上げてきた品行方正で無害なレイリ・ウチハが水泡に帰し、冒頭に至るのであった。

20160317
20160602加筆
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