万物流転 | ナノ
8.おおぞら2
ごちそうさまでした。と手を合わせる私を両サイドから赤毛の双子に見詰められ、少しだけ居心地が悪い。

見慣れてしまったであろう習慣を、どうしてそう…まじまじと見詰めてくるのだろうか。そう思っていると、両側からぱちんと音が聞こえてきて『ゴチソウサマ』と二人が言った。

怪訝な視線で訴えかければ、フレッドが「なんかこれ、験担ぎにならないかなって」そしてジョージが「なんだかこの儀式、神聖そうだし」と真面目な顔で言った。

「急に何やりだすのかと思えば…ねぇアンジー」
「あんたらも馬鹿ねぇ」

そんなに堅苦しい儀式でもないし、これは何の験担ぎにもならないんだよと双子に説明したところで無駄だと思うので、私は溜息を吐いた。

「ちょ、アンジー!馬鹿とかそれは言い過ぎだろ!」
「そんな目で僕らを見詰めないでくれよ二人とも!」

「験なんて担がなくても、私達のチームワークとパワーがあれば
 卑怯な貧弱スリザリンチームなんてコテンパンに伸してやれるわよ」

やはり、アンジェリーナ様は今日も男前でかっこいいです。

***

大広間を出る時、同じグリフィンドールのテーブルに一年生達が秘密兵器と名高いハリーを囲むようにして座って食事をしていた。ハーマイオニーと目が合い「あら、おはよう」と微笑むと「先輩!」と呼び止められた。

「ハリーがトーストも食べないんです」
「だって僕、お腹空いてないんだよ」

そうハリーが言って机に伏せると、他の少年が自分の皿に乗せたソーセージにケチャップを山盛りにしぼり出しながら「気を付けておけよ。シーカーは真っ先に狙われるぞ」と、本人はそうは思っていないだろうけど、ハリーの不安を煽るようなことを言う。

彼の発言はスリザリン的だった。もしこれを彼が故意にハリーへ言っているのだとすれば、なかなか良い性格をしていると思う。

「…デビュー戦の日だものね。 ポッターがそう言っているんなら、無理に食べさせなくてもいいんじゃない?」

「レイリ先輩!」
「まぁまぁ最後まで聞いてグレンジャー…でもね、ポッター。
 日本には『腹が減っては戦はできぬ』という言葉があるの」

仕方ない…気落ちする可愛い後輩の為に、ここは人肌脱いであげようじゃないか。

20130810
20160401加筆
20170103修正
title by MH+

*あともう一話
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