万物流転 | ナノ
2.とくべつ
双子のフレッドとジョージは、また廊下で例の『カナリア・クリーム』の売り込みに精を出していた。休み時間には、ホグワーツの至る所で、色鮮やかな大きなカナリアに変身する生徒達の姿を見た。

本当に、彼らは元気だなぁ…僕は、双子のそういう奇想天外な悪戯グッツを発明して人々をアッと!言わせたり、驚かせたりするところや、いつも底抜けに明るいところに救われていると思う。

「フレッドのやつ、フィルチに見つかって三階の廊下の箒掛けの罰則だってさ」
「まぁ!…でもジョージの姿も見えないけど?」

昼食の時、六年生が固まって座るテーブルからそんな声が聞こえてきた。にやっとして、フォークに突き刺した肉を口へ運んだドレッドヘアの彼は、リー・ジョーダンで、双子の悪友である。また、寮対抗クィディッチ試合では、マクゴナガル先生にどやされながら実況解説を務める兄貴分な先輩だ。

そんなリーの前に座って、カボチャジュースを飲みながら彼に尋ねたのは、同じく僕より二学年上のアリシア・スピネット先輩である。彼女は、僕たちクィディッチ代表チームのチェイサーである。ほっそりとしており、肌がゆで卵のようにつるっとしていて女の子らしい先輩だ。

彼女が、リーへ尋ねると「ジョージは、ちょっと野暮用があるとかないとか」頬を掻きながら、どこか言いにくそうにしてぼそぼそ言うと、アリシア先輩は「まさか、またレイリの後を追っかけたんじゃないでしょうね!」と声を張り上げた。

そんなアリシア先輩の隣りに腰を落ち着け、今日も今日とてもりもりと食べ物を平らげているのは、アンジェリーナ・ジョンソンで、彼女も寮対抗クィディッチ代表選手であり、アリシア先輩と同じくチェイサーとして活躍するかたわらオリバー・ウッド(卒業した僕のクィディッチの先輩で、試合前の大演説がある意味有名)の後任として、キャプテンも兼任している。

アンジェリーナの明るく快活な性格は、同級生のみならず僕たち後輩からも人気があり、強くたくましい先輩に、密かに憧れを抱いている女子生徒も少なくはない。

「アリシア。食事の時は、大声出さない。…ほら、座る」
「でも、アンジー!」

僕の隣りに座ってお肉を目一杯口の中へ押し込んでいるロンも、もの凄い勢いで食道へと食べ物を掻き込んでいるハーマイオニーも兄の片割れと、親愛なる先輩の名前が彼らの口から飛び出すのを聞いて、耳だけはそちらへ傾けている様子だった。

「ジョージったら、またレイリとディゴリーのところへ…」

「まぁまぁ、アリシア。落ち着けって!そんな、かっかするなっての。可愛い顔が台無しだぜ?」

「だって!そんなに二人の仲が気になるなら、直接レイリに聞けばいいのに…探偵紛いの――いえ、むしろ、ストーカー紛いの行動をするなんて」

僕は、飲んでいたカボチャジュースを正面のハーマイオニーに噴き出しそうになった。それを察知したハーマイオニーは、空になったお皿で自分をガードしていた。

「私はいやよ。いくらレイリのことが好きだからって、一日中ずっと監視されてるようなものじゃない!ディゴリーのことが気に入らないからって、いやがらせのような悪戯を企んでるジョージのこと見たくないもの!」

アリシア先輩は、そう主張し周りにいた女子の先輩達が同意するように頷いていた。リーは苦笑いを零していたが、その近くに座っていた男子の先輩たちはにやにやと笑って何か話していた。

ジャガイモを突きながら茶髪の先輩とブロンドの髪の先輩が「あのジョージがなぁ」「クィディッチと悪戯グッズにしか興味なかったあいつがなぁ」としみじみしていた。彼らは、どこか面白そうな顔つきをしている。

その間、アンジェリーナ先輩は、一言も言葉を発さずにもりもりと食事を進めており、僕は、そんな彼女に一種の潔さのようなものを感じた。

僕も、周りの言動に流されないような確固たる自分のペースと言うものを持つアンジェリーナ先輩のようになりたい。

20130914
20131026修正
title by MH+

*ハリー視点続きます
*ここのアンジェリーナは、日常生活のことになると我関せずな態度をとり、一見無関心な子のように見えるけれど、友達思いで良識的に考えて、卑怯だと思われることやダメだと思われることを嫌い、胸の内では言葉にしないだけで、色々と考えている…そんな子です
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