万物流転 | ナノ
28.いたずら2
十月三十日の朝、朝食に下りて行くと、大広間はすでに飾り付けが済まされていた。壁には、魔法が掛けられている天井が覆い尽くされるくらいに、各寮を示す巨大な絹の垂れ幕が掛けられている。さらに、教職員の奥の壁には、ホグワーツ校の紋章が描かれた一番大きな垂れ幕が掲げられており見る者の目を惹き付けた。

「昨日の晩に頼んで、例のブツを手渡してもらったぜ」
「もしかしたら、もう食べてるかもな」
「それだとしたら、今日はもう下りてこられないかも」
「おはよう二人とも…何話してるの?」

けらけらと笑う双子を、グリフィンドールのテーブルの端で見つけると、びくっとした二人の肩が勢いよく跳ね上がった。ギギギと、まるでブリキの玩具のようなぎこちない動きで背後に立つ私に振り向くと、何とも言えない微妙な顔で「や、やあ。おはようレイリ!」と取り繕った感満載の声色で挨拶をしてきた。

(あ、何かやったんだな)直感的に思って、私は怪訝な目を二人に向けていたのかもしれない。捲し立てられるように、今日の時間割のことや、再提出になってしまった眠り薬のことや、魔法史のレポートで分からないところがあるから教えてくれとか。

双子の口からは、次々言葉が発せられたので「うるさい」と一蹴りして、私はテーブルの中央へと向かった。私が去ると、あからさまに安堵したと言うような溜息を二人で吐いていて、私は双子に対しての疑念がさらに膨らんだのであった。





結果的に(やはり教授達にも分かっていたことであったが)その日は心地よい期待感があたりを満たしており、夕方になればお客様が到着することに気を取られ、またある者は、三校対抗試合に名乗りを上げるんだ!と周りの友人達に宣言したりなど、誰も授業に身が入っていなかった。

月末のため、同じ六年の監督生であるコンラッド・アダムズと約一ヶ月分の始末書をそれぞれの場所へ提出しに行った。私は獅子寮、蛇寮の寮監督へ。そして、アダムズは穴熊寮と鷲寮、さらに管理人フィルチの元へも赴く。

スネイプ教授の室へと行くと、ちょうどセドリックが中から出てきた。「やあ、レイリ」声を掛けられたので「どうも」とだけ言ってノックをし、名乗ってから扉を押し開き、始末書を提出すべく教授の机へと近づいた。事務的な会話の応酬を終えると「失礼します」と言って部屋を出た。教授からは「ご苦労」と一言だけだが返事が返ってきたので、ちょっとばかし嬉しくなった。

扉を閉めると、向かいの壁に背を預け、手には何やら毒々しい色味のゼリービーンズが瓶詰めにされたものを持っていた。「待っててくれたの?」と言えば、にこっと笑ったセドリックが「仕事が一緒だからね。玄関ホールまで一緒に行こうと思って」と言った。

「ねぇ、それどうしたの?」
「後輩の子からもらったんだ。食べようと思って…」

「ねぇ、毒味してもいい?」
「毒味なんて!ただのお菓子だよ、レイリ?」
「双子から妙なことを聞いちゃったもので…」

私がそう言えば、少し考えた後「確かに、僕もハニーデュークスでは売っているのを見たことがないからねえ」と言って瓶の蓋を開けて、紫色に輝く怪しげな一粒を私に手渡した。

「私が食べて、異常が無いって分かってからじゃないと、セドリックは食べちゃだめだからね」と人差し指を彼の鼻先へ向けて、念押ししてから私はそれをパクッと口へ含んで咀嚼した。

(な、んだ…これ――身体がオカシイ―――?)

20130901
20131102修正
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