万物流転 | ナノ
47.ゆるすよ
「なんと慈悲深い…ありがたい!」ハリーの身体に縋ろうとした鼠男を「触るな!」と一蹴りし汚らわしいと言わんばかりの目で睨み付けた。

「ハリー、それでいいんだね」
「君だけが決める権利がある」

じっと大人二人に見つめられてたじろぐハリー。私は「シリウスさん、勘違いしないでくださいよ?闇祓いにも権限ありますからね」と付け足して、同じようにハリーの決断を待った。「こいつはアズカバンに行けばいいんだ!」と繰り返しいって頷いたのを聞き「それじゃあ」と杖を上げるルーピン教授を私が制する。

「ここからは、私にお任せ下さい。ルーピン先生?」
「…君は!」

私は右腕をやんわりと押さえて、ルーピン先生の耳元へ口を寄せて(しー、内緒です)と言った。あーあ、先生にばれちゃった。彼は信じられないと目を見張ったが(君にも事情があるんだね)と同じように小声で返してくれた。

逆戻り呪文をかけて、ネズミの姿に戻ったペティグリューを魔法で出した丸底フラスコの中へ押し込んだ。コルクで栓をすれば完全密封することが出来る。

時間が経てば、酸素欠乏症になり襲ってくる目眩や吐気に、まず彼は、逃げようだなんて言う考えは消え去るだろう。この手段は暗部での尋問でもよく使ったものだった。

私は意識を脱狼薬を取りに行かせた分身に集中させ、私が二人いるのを見られてはまずいので鴉に姿を変えさせて薬を運ばせた。





ハーマイオニーが先に暴れ柳の穴から這い出て、根元のこぶに触った。これでもう、この木の理不尽な暴力を受けなくていいだろう。鴉が見ているヴィジョンを確認し、私は溜息を吐く。

シリウスとハリーが、右足を骨折したロンに肩を貸してやり、ルーピン先生が意識のないスネイプ教授を『モビリコーパス』と唱えて運び出した。

ピーターの入ったフラスコは私のポケットの中。それを確認しながら、少し離れたところでシリウスとハリーは、月夜に浮かぶホグワーツ城を見ながら何やらを話しているのを見ていた。

頭上で旋回している鴉を呼び寄せ、ゴブレットを受け取った。鴉は肩にとまって、二回鳴いた。

私は鴉をそのままに、ロンとハーマイオニーのいる方へ振り返った。びくっとする二人に私は面の下だけでこっそりと笑って、ロンの左足へと手を伸ばす。

「何をするんだ!」ロンが大声を出したのでハリーとシリウスが振り返ったが、何もなかったようにまた二人で話を続けていた。

「なにと言われましても。足の治療ですよ?」当たり前のことを言ったつもりだが、この面をつけたままでは私の表情が読み取れず、終始不安そうな顔つきで私の作業を見つめていた。

20130819
title by MH+
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