万物流転 | ナノ
46.うらぎり13
ブラックの口から、最後の最後になって秘密の守り人は彼の助言でピーターに代わったのだと涙ながらに告げられると、ルーピンは情け容赦ない声色で「話はもう十分だ」と言った。三人組は、彼の冷たい声にびっくりして口を閉ざす。

私は短く息を吐いて「話にけりがついたところで、そろそろ本題に移りますよ。私が今夜捕らえに来たのは、あなたです」と、ウィーズリーの持つ鼠を指差して言った。

彼の表情が凍り付いたので「いえいえ、違いますよ。あなたの手に抱えているそこの鼠です」と茶化すように言えば、手元でもがくペットに視線を落とす。

「ロン、そのネズミを渡しなさい」

ルーピンの冷たい声に「こいつはピーターなんかじゃない!スキャバーズだ!」と、意地でも渡さない!と言うかのように、私達から鼠を遠ざける。まるで、十二年間も自分のペットであったネズミが、まさか世間を欺き親友を身代わりに牢獄へとぶち込んだピーター・ペティグリューだと信じたくない様子だ。

「ロン思い出して!レイリ先輩の言葉を…」

ハーマイオニーのやっとしぼり出した微かな声に、バッと顔を上げたハリーが「…っ!そういうことだったのか」と呟いた。ようやっと、私が彼らにかけた言葉の意味を理解してくれたか。先輩は嬉しいよ。あとは、君次第だね。ロンくん。

「ロン『大切なものを切り捨てる覚悟』ってこれのことだよ」

「ルーピン教授、あなたはホグワーツ魔法魔術学校の闇の魔術に対する防衛術を担任していますね?あの鼠の本当の姿を暴くために、協力を要請します。いいですね?」

ルーピン先生は、こくりと頷いて杖を構えた。「ロナルド・ウィーズリーくん…あなたがもし真実を知っても、あなたはこの鼠を庇うことができるかしら?」シリウスがスネイプ教授の杖を奪うのを横目に、私は嘲るように言った。シリウスが期待を込めて私をじっと見つめる。「シリウスさんも、ご協力下さい」私がそう言えば「シリウス、準備は?」とリーマスが言った。

ロンはためらったが、私の手に嫌がる鼠を手渡した。「確かに。指が一本かけていますね」私が二人に合図をして鼠を床に落とすと、鼠は待ってました!と言わんばかりにちょろちょろとピアノの上やベッドの下を通って、出口の扉まで走る走る。シリウスが執念で振るった呪文がようやく身体に当った時、壁の隙間に挟まって動けなくなった薄汚れた下半身が姿を現した。

「あなたが、十二年前の真犯人」二人に引っ張り上げられてようやくこちらに顔を見せた小柄な男ピーター・ペティグリューに、ロンは息を呑んだ。ペティグリューはきょろきょろと辺りを見回して「リーマス?シリウスか!なつかしの友よ」と言って二人に歩み寄ろうとしたが、旧友二人はそれを拒絶した。

「ハリー! なんとまぁ…きみはお父さんそっくりだ!」

それから、ハリーにも手を伸ばそうとしたが「よくもそんな口が聞けるな!」とシリウスに遮られて突き飛ばされた。「おまえがジェームズとリリーをヴォルデモートに売ったんだろう!」と鋭い口調のルーピン教授に言われて、声にならない悲鳴を上げた。やっとのことで立ち上がりながら「でも…あの恐ろしい闇の力の前では、君なら抗えたか!」とシリウスに向かって鼠男は言う。

「俺なら死ぬ!友を裏切るくらいなら死んだ方がましだ!」

シリウスにきっぱりと言い切られて、鼠男の顔は絶望の色に染まる。そして再び、ハリーに近づいて「きみのお父さんのジェームズならわたしをころさせようとはしないよね」とこの期に及んでそんなことを言う。「ははははは!」突然笑い出した私に、飛び上がった鼠男は目を恐怖に染めて私を見た。

「甘いですね、ピーター・ペティグリュー」
「…ヴォルデモートが殺さないなら、我々が殺す!」

「やめて!」ハリーが叫ぶと、シリウスもリーマスも今にも振りかぶろうとしていた手を止めた。「ハリー、この男は…」静かな声のルーピン教授を遮り「分かっています。だから、ころすのではなく、その人に引き渡しましょう、先生」とハリーは冷静に言った。

20130819
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