Panta rhei 通信
≫セオドールが別人の話
ダドリー姉ポジ
セオドール・ノット
彼はホグワーツ魔法魔術学校の生徒で、ハリーたちと同じ学年のスリザリン生である。
彼は、自身の周囲を身内でがちがちに固め、群れを成して集団行動をするという特性を持つ蛇寮生には珍しく、ひとりでいることの方が多い。
しかし、スリザリンの一年生の中では一番の権力を持つ、マルフォイ家の嫡男ドラコとは、対等な立場で付き合っているようだ。
そんなやや一匹狼な性格の持ち主ではあるが、全く協調性がないということではないらしい。
同寮の生徒、それが男子であっても女子であっても、声をかけられればそれに応じたし、彼らを邪険に扱うことはしなかった。
ただし、それに彼自身の学習が絡んでいなければ、の話であるが。
その実、空いている時間を勉学に注ぐ、真面目で非常に賢い生徒であった。
それは、グリフィンドールのハーマイオニー・グレンジャーとタメを張れるほど。
勉強に対しては、自分に厳しく、他者にも厳しい人間、それが、セオドール・ノットであった。
先にも示したように、彼、セオドールは、魔法界でも確実に純血であるという歴史を持つ、由緒正しいノット家の嫡男である。
父は、やもめで高齢らしい。
もちろん、生まれてこのかた、彼は純血思想を重んじて生きてきた。
それが、この魔法界において何を意味するか。
それはつまり、息を吸うのと同じように、マグルの血を憎み、マグル生まれを見下し、マグルを蔑んで生きてきたということになる。
しかし、この学校に入学してからの彼は、驚きの連続だった。
そこに思い至ったのは、彼が、他の生徒と比べて、思考が大人びていたからであると言えよう。
気に入らないものを、何か理由をつけて、排除しようとする子ども染みた真似をしなかったのだから。
そしてまた、それだけの思考力を有する彼には、悲しい出来事があったということも。
セオドールは、ただの子どもでいられなかった。
家庭環境がそれを許さなかったからである。
彼は、知的探究心には、とても素直な人間性を持つ。
そして、自分の今までの常識では、全く太刀打ちできない希有の才能を持つ存在から、目を離せないでいた。
その存在こそ、魔法界の英雄ハリー・ポッターの姉でありながら、マグル生まれマグル育ちの、彼が最も忌むべき人種である
ウィスティリア・ダースリー
その人であった。
「きみ、本当にマグルと育ったの」
彼は、彼女を知りたいと思った。
だから彼は、彼女に近付いた。
「絶望だ」
:
彼は、知りたかった。
そして彼は、自分が存外、柔軟な頭を持つことのできる人間であるということを知った。
最初、彼女はただ、訝しんで彼を見るばかりであった。
「わけが分らないわ」
それこそ、信頼するハリーたちの前で見せるような、明るく柔らかな笑顔なんて、彼の見られるものではなかった。
しかし、一匹狼と表される彼にしては珍しい行動力を発揮させ、言葉を交わすうちに、次第にそれぞれの誤解は互いに解けて行った。
一方は、相手の見方を変えただけであるが、もう一方は、そう単純な話ではなかったが。
もちろん、そのもう一方というのが、本題のセオドール・ノットのことである。
彼は、彼女に日々惹かれていく自分に嫌気が差していたが、彼女と過ごす時間を手放し難く思う自分が、心の奥にいることを、どうしようもなく認めざるを得なかった。
いつしか、相容れぬ血が流れ、性別すら異なるもの同士は、友と呼べる存在に限りなく近しいものに変化していた。
セオドールにしてみれば、その変化は以前の自分では予想だにしていなかったことであろう。
「穢れが移るわよ」
「きみが……」
「ねえ、ちょっと!ほんとうにどうしたの?」
「どうしてきみは…! 違うな、どうして僕は今まで…」
そして、純血思想とは、一族とは、魔法界とは、自分にとって何なのであるか、ということを考えるようになっていた。
「ノット…?」
「…僕は少し頭を冷やしてくる」
これは、ちょっとしたきっかけと、気付きの蓄積に、知的好奇心をくすぐられた彼の末路である。
とりあえず、執筆者はセオドールに夢を見すぎている。
私の妄想の犠牲になったセオドールは、私を殴ってもいい。
20161003
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≫セオドールが別人の話
ダドリー姉ポジ
セオドール・ノット
彼はホグワーツ魔法魔術学校の生徒で、ハリーたちと同じ学年のスリザリン生である。
彼は、自身の周囲を身内でがちがちに固め、群れを成して集団行動をするという特性を持つ蛇寮生には珍しく、ひとりでいることの方が多い。
しかし、スリザリンの一年生の中では一番の権力を持つ、マルフォイ家の嫡男ドラコとは、対等な立場で付き合っているようだ。
そんなやや一匹狼な性格の持ち主ではあるが、全く協調性がないということではないらしい。
同寮の生徒、それが男子であっても女子であっても、声をかけられればそれに応じたし、彼らを邪険に扱うことはしなかった。
ただし、それに彼自身の学習が絡んでいなければ、の話であるが。
その実、空いている時間を勉学に注ぐ、真面目で非常に賢い生徒であった。
それは、グリフィンドールのハーマイオニー・グレンジャーとタメを張れるほど。
勉強に対しては、自分に厳しく、他者にも厳しい人間、それが、セオドール・ノットであった。
先にも示したように、彼、セオドールは、魔法界でも確実に純血であるという歴史を持つ、由緒正しいノット家の嫡男である。
父は、やもめで高齢らしい。
もちろん、生まれてこのかた、彼は純血思想を重んじて生きてきた。
それが、この魔法界において何を意味するか。
それはつまり、息を吸うのと同じように、マグルの血を憎み、マグル生まれを見下し、マグルを蔑んで生きてきたということになる。
しかし、この学校に入学してからの彼は、驚きの連続だった。
そこに思い至ったのは、彼が、他の生徒と比べて、思考が大人びていたからであると言えよう。
気に入らないものを、何か理由をつけて、排除しようとする子ども染みた真似をしなかったのだから。
そしてまた、それだけの思考力を有する彼には、悲しい出来事があったということも。
セオドールは、ただの子どもでいられなかった。
家庭環境がそれを許さなかったからである。
彼は、知的探究心には、とても素直な人間性を持つ。
そして、自分の今までの常識では、全く太刀打ちできない希有の才能を持つ存在から、目を離せないでいた。
その存在こそ、魔法界の英雄ハリー・ポッターの姉でありながら、マグル生まれマグル育ちの、彼が最も忌むべき人種である
ウィスティリア・ダースリー
その人であった。
「きみ、本当にマグルと育ったの」
彼は、彼女を知りたいと思った。
だから彼は、彼女に近付いた。
「絶望だ」
:
彼は、知りたかった。
そして彼は、自分が存外、柔軟な頭を持つことのできる人間であるということを知った。
最初、彼女はただ、訝しんで彼を見るばかりであった。
「わけが分らないわ」
それこそ、信頼するハリーたちの前で見せるような、明るく柔らかな笑顔なんて、彼の見られるものではなかった。
しかし、一匹狼と表される彼にしては珍しい行動力を発揮させ、言葉を交わすうちに、次第にそれぞれの誤解は互いに解けて行った。
一方は、相手の見方を変えただけであるが、もう一方は、そう単純な話ではなかったが。
もちろん、そのもう一方というのが、本題のセオドール・ノットのことである。
彼は、彼女に日々惹かれていく自分に嫌気が差していたが、彼女と過ごす時間を手放し難く思う自分が、心の奥にいることを、どうしようもなく認めざるを得なかった。
いつしか、相容れぬ血が流れ、性別すら異なるもの同士は、友と呼べる存在に限りなく近しいものに変化していた。
セオドールにしてみれば、その変化は以前の自分では予想だにしていなかったことであろう。
「穢れが移るわよ」
「きみが……」
「ねえ、ちょっと!ほんとうにどうしたの?」
「どうしてきみは…! 違うな、どうして僕は今まで…」
そして、純血思想とは、一族とは、魔法界とは、自分にとって何なのであるか、ということを考えるようになっていた。
「ノット…?」
「…僕は少し頭を冷やしてくる」
これは、ちょっとしたきっかけと、気付きの蓄積に、知的好奇心をくすぐられた彼の末路である。
とりあえず、執筆者はセオドールに夢を見すぎている。
私の妄想の犠牲になったセオドールは、私を殴ってもいい。
20161003
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