木は根を這っているのだから、多少のことでは挫けないなんて。
意志が強いだなんて、誰が言っただろうか。
一番辛いのは、思い出していただけないこと。
一番恐ろしいのは、忘れられてしまうこと。
僕が一番に想うのは、お嬢様のことなのに。
僕は、逞しくなんかない。
お嬢様がいらっしゃらなければ、存在価値を見出だせない、そんな、ひ弱な白藤でございます。
素敵なお嬢様のお名前の字を頂いたのに、僕は…
それでも、こんな僕でも、お嬢様をお慕いしております。
だから、どうか、お願いです。
待てと仰るなら、いつまでもお待ちしております。
迎えにきてくださるのなら、いつまでも。
そのときにまた、今日の出来事をお話くださいませ。
あの庭の奥で、僕は―――
―――白藤は、お待ちしております。
(藤色が似合う、ある青年の想い出噺)
綴手:fmica
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