花は逞しく 5



帰り道をなくしたあなたの顔を覗きこんで、不器用に笑った僕を覚えていますか?









「あなたのおなまえは?」


(僕に名前はありません。)


「へんなの!」


(…と言われましても。)


「じゃあ、同じのをあげる。私の名前と一緒の字!」


(え?同じ、一緒の字?)


「そうよ。この花は、――と言うんですって。私のこの字と一緒よ!」


(…この月に咲くものなのですか?)


「本当だったらね。それで、だから私もこの字をいただいたのよ。」


(…でも、)


「え?」


(…)


「話すなら話してよ!うじうじしてないで頂戴!男の子でしょう!?」


(!……っでもこの花はいつも、ここに、月も季節も変わっても咲いています…)


「そういえばそうね。でも、それがなあに?」


(…!)


「いつでも私とあなたの花が咲いているのよ?それが見れるのは嬉しいし、私はとっても幸せものだわ!」


(…ぼ、僕も、おんなじです。)


「…でしょ!」


(…はい)







思い出話に花を咲かせるだけの、簡単な僕の現実逃避行。





お嬢様は、この年で十と七つを数える。











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テーマ「人外ファンタジー」
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