「あ、有り得ねぇ・・・!有り得ねぇよ・・・!!何で、何で!

何で猫耳が生えてんだよ!」


誰も居ないトイレで俺の悲痛な叫びだけが静かに響いた。

教室から飛び出した俺は、誰も使わないような職員用トイレに入って鏡を見るやいなや、もう本当ビックリし過ぎて死ぬかと思った。いやマジで。
艶を持った黒髪から覗く、髪と同じ色の三角形の物体。それは紛れもなく上杉が言った、猫耳そのものだったわけで・・・。


「いやいや、待て待て待て待て。落ち着け俺。これは何かの冗談だろ、はは!取り乱して馬鹿みてぇ!大体人間に猫耳なんて生えるわけねぇじゃん」

そう、これは夢だ。
そう自分に言い聞かせながら自らの頬をきつく捻ると、そこでまた違和感。


ぷにぃ


いつもの指の感触と明らかに違うそれに、俺は恐る恐る手の平を上に向けた。

「・・・・・はぁ!?」


五本の指先と手の平にある小豆色のソレ。余りの衝撃にソレでぷにぷにと頬を触りながら、俺はポツリと呟いた。


「肉球まで・・・まさか!?」


俺の手の平に生えたもの、それは小豆色をした肉球だった。
肉球のぷにぷにとした感触を頬で味わいながら、俺はハッとした。肉球があるということは・・・・・!

慌ててその場でズボンをずらすと、そこから出てきたのは予想通り尻尾だった。ご丁寧に髪と同じ色の。


「・・・訳わかんねぇ・・・」

がっくりと首をうなだれながら、俺はこれからどうしようかと考えた。

もしもこのまま猫耳が生えたまんまだとしたら、俺は世界ビックリ人間としてメディアに取り上げられるのではないか。そして仕舞には飽きられてただの猫男として人里離れた山奥に隔離させるんだ・・・。ぜってぇそうだ。


「・・・そんにゃのぜってぇ嫌だっ!!!」

・・・・・。


誰か夢だと言ってくれ!!




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