「チッ・・・、見てんじゃねぇよ。うぜぇなぁ・・・」


四方八方から飛んでくる視線に苛立ちながらも、自らの席へと荒々しく腰を掛ける。
クラスの連中はそんな俺の様子を見て、恐れながらも固まってブツブツと何かを呟き合っていた。
その光景を黙って見ていると、一人の男が恐る恐る俺に近づいてきた。


「と、兎丸くん・・・!」
「・・・誰だよ」
「え、あ、上杉です!」


チラリと目線で話を促すと、その上杉と言った男は言いにくそうに目線を動かした。
なかなか話しださない上杉に苛立ってきた俺は、机を指先でカツカツと叩き、早くしろ、と訴えた。すると上杉は意を決したように固く目を瞑り、そして・・・



「な、何で猫耳付けてるんですか!!!」
「・・・・・は?」



ふるふると睫毛を揺らしながら叫ぶように言った上杉に、クラスの連中は「よくやった」と言わんばかりの表情で上杉を讃えている。
だが今の俺にはそんな事どうでもいいわけで、


「ね、こ・・・みみ・・・?」
「は、はい!教室に入ってきた時から付けてらっしゃるので、疑問に思いまして・・・!」
「教室に入った時から・・・」


上杉の言葉に唖然としながら、俺は震える腕を叱咤して無理矢理頭上へと持ってきた。そして、


―――ふわっ


「!!!」


―――ふわふわっ


「!!!!!」



手の平に感じる柔らかい三角形の物体。きゅっ、と掴む度に頭の上がツキリと痛んだ。

まさか、まさか、まさか・・・・!!



ガタンッ、
と大きく音を立てて椅子から立ち上がると、俺は頭を手で覆いながら大急ぎでトイレへと駆け込んだ。


「・・・兎丸様って、そういう趣味があったのかな・・・」
「どうなんだろ・・・でもさ、」
「「似合ってたよね・・・」


慌てて飛び出した俺は、教室内でそんな会話が繰り広げられてるなんて知るよしもなかった。
ていうか知りたくもねぇ!




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