「実はそれ、私の手作りなんだ」
「へぇ・・・、上手いっすね。料理とか得意なんですか?」
「ただの趣味の一環さ。・・・おっと、ごめんね?次の授業の準備があるからこれで失礼するよ。引き止めて悪かったね、それじゃあ」


先生はまた情けなく眉を垂らしてニコリと笑い、白衣の裾をひるがえして廊下の奥へと消えていった。
俺はその後ろ姿を確認して、自らの教室に帰る前に便所に寄ることにした。





「・・・・・?」


用を足し終えて手を洗っていると、不意に頭の奥がジリジリと熱を持っているような感覚に襲われた。微かだが尻にも熱を感じる気がする。
別段痛いといった訳ではないので、俺は不思議に思いながらも教室へと戻ることにした。


あの時もっと気にしていれば、あんなことにはならなかったんだろうな。
今更後悔しても意味ねぇんだけどよ。


*


ガラリ、と小気味のいい音を立てて教室のドアを開く。
途端に騒ついていた教室がほんの少しだけ小さくなり、チラホラと誰が教室に入ったのかと確認する奴がドアの方へと視線を向けた。

「「「!!!?」」」


するとドアの方を見た連中が揃って化け物でも見たように目を見開くもんだから、俺も気になって後ろを振り向いてみる。
が、別に何もねぇ。

訳が分からん、
そう思いながらまた教室の方を向くと、そこで漸く視線の矛先が俺に向いていることに気が付いた。


「・・・んだよ」


多数の驚愕の眼差しで突き刺され、居心地の悪い思いでそう言うと、ドアの方を見ずに話し続けていた連中もこちらを見て

「「「!!!!?」」」

・・・また目ぇ見開きやがった。


何なんだよ、マジで・・・。




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