にーい
「これってどうせ夢だよねぇ?うん、夢だよ。夢に決まってるじゃん。むしろ夢じゃないと許さねぇぇぇええ!!」
「残念ながら魔王、これは現実です。リアルなのです」
「リアルとか言うな!ていうか俺は魔王じゃなくて、佐藤壱夜っていう名前があるの!!」
申し訳ありません壱夜様、そう言いながら変態タキシードは俺の右手にキスをしようとするが、それを思い切り振り払って睨み付ける。
「っ、そんな情熱的な瞳で見つめないで下さいませ・・・!」
いや、見てねーし!!もうほんとにキモいこの人!
汚物を見るかのように見下げれば、変態タキシードはまた頬を赤く染め、くねくねと体を捩らせていた。
心の底から引いた。
とにかく、今の俺の状況は魔王として異世界に呼ばれた、ってことでいいんだよね?
何かそんなマンガあった気がするんだけど・・・。でも俺、別に黒髪でもなければ黒眼でもなく、くすんだ茶髪に焦げ茶色の眼という、全くもって普通の高校生なんだけどなぁ。
まさに一般ピーポーなわけよ。ドューユーアンダスタン?
「ねぇねぇ、俺絶対魔王じゃないと思うんだよね。だから元の世界に帰してください!」
「いや、貴方様は魔王だ。・・・とは言っても、今の貴方は何の力も無い只の人間だが」
「ど、どゆこと?」
手っ取り早く赤髪の人に帰らせてくれと言ってみると、全く意味の分からん言葉が帰ってきた。
・・・じゃあ俺帰っていいじゃん!
「それは駄目だ」
「エスパー!?」
「俺には他人の心を読む力がある。・・・実はさっきから魔王の心の声を聞いていた、すまない」
え、やだ何ソレ・・・えろい!
「いや、別にエロくはないだろう!」
「かなりえろいよ!!赤髪さんは変態タキシードと違って男前だなーとかは別に思ってなかったけど、結構まともな印象だったのに!ムッツリ悪魔め!!」
「む、ムッツリ悪魔・・・」
俺の言葉に傷ついたのか、地面に膝を付けてうなだれるムッツリ悪魔。
その姿にはちょっと、ほんのちょっっと同情するけど、ムッツリ悪魔だから仕方ないよね?
だってムッツリ悪魔は人の心を覗いちゃうようなムッツリ・・・てか只の変態?いやでもやっぱりムッツリか。
ムッツリはムッツリでもそんじょそこらのムッツリじゃなくて、力の入ったムッツリであって、ムッツリの中の神?みたいな?
そもそもムッツリっていうのは・・・・
「ムッツリムッツリ言いすぎだろ!!」
「あ、また心読んだ。ムッツリ〜」
「止めろぉぉぉおおお!!」
あ、泣いちゃった!てへ!
◎