5
「大丈夫?」
その一言で僕のこころはいっぱいになった。
入学してから今まで、誰も僕に話しかけてくれなかった。
そのくせ遠くからじっと僕のことを見つめてるんだ。
僕が廊下で転けたときも、プリントをばらまいたときも、いつだって見てるだけだった。
でも、でも副会長は大丈夫って言ってくれた。手を差し伸べてくれた。
・・・・うれしい、すごくうれしい。
そう思ったら勝手に涙が出て止まらなかった。
「うっ、ふええええっ」
「っ!!?」
「千春たん!?」
すぐ側で副会長の息を飲む声と、会長の僕を呼ぶ声が聞こえた。
なんで僕の名前を知ってるんだろう?そう思ったけど、喋ろうとしても声がでないんだ。
「ご、ごめんね?僕何か気に障ることいった?」
「千春たん大丈夫か!?」
「ちょ、会長本人に千春たんって言うのやめなよ!」
「え、あ、ああっ!じゃあ、ち、ちは・・・・・駄目だ!呼べねえ!」
「いや、千春たんの方が恥ずかしいでしょ」
ぐずぐずと鼻を鳴らす僕の前で不思議な言い合いをする二人に、僕はほんのちょっとだけ笑ってしまった。
何で僕の名前を知ってるんだろう、とか。
親衛隊の人たちに見つかったらどうしよう、とか。
そんなことは何だかどうでもよくなって、二人の言い合いを見てたら何だかすごくおかしくなっちゃって。
「ふふっ、あははっ!」
「!!!」
◎