「悠介?」
「あ?」

売店への道のりをゆっくりと歩いていると、後ろから声を掛けられたので声のした方へチラリと視線をやる。
そこには出来れば会いたくなかった奴がいて、俺は思わず顔を顰めた。

「やっぱ悠介だ」

顔を顰めてる俺なんてお構い無しに満面の笑みで駆け寄ってくるソイツは、ドMに定評がある太雅だった。


「テメェ不良のくせに朝っぱらから学校来てんじゃねぇぞ」
「何それ理不尽!・・・今日はお前に会いたかったから学校来たんだよ」
「はあ?」

意味の解からない、いや、解りたくねぇ太雅の言葉に眉根を寄せていると、太雅はごそごそとポケットの中を漁りだした。


「今日バレンタインだろ?やるよ」


そう言って渡されたのは小さめ長方形の箱。多分中身はチョコか何かだろうが・・・

「何か嫌な予感がする」
「・・・何言ってんだよ、別に怪しいモンじゃねぇって」

ほんの少しだけ顔を引き攣らせて言う太雅を俺が見逃すはずもなく。
長方形の箱から中身を取り出し、ニッコリと笑ってこう言った。


「怪しくねぇなら、食えるよな」


俺の言葉にヒクヒクと頬を引き攣らせ、徐々に後ずさっていく太雅。
その歩幅に合わせてゆっくりと距離を狭めていき、太雅の顔色が格段に悪くなってきたところで思い切り胸倉を掴み上げた。

「ひっ!」

情けない声を上げる太雅に俺は喉の奥をくつりと震わせ、そのまま持っていたチョコを太雅の口内へ無理矢理捩じ込んだ。


「むぐっ!!」
「指噛んだらぶっ殺す」


ギロリと睨み付けながら言えば、太雅は少しだけ頬を染めながらゆっくりと口を開いた。さすがマゾヒスト。

「指に付いたのもキレイに舐めとれよ」
「ん、む・・ふ・・・・」

いつの間にか太雅は抵抗することを止めて、素直に俺の指にしゃぶりつく。粗方キレイになったところで太雅の口内から指を抜き取り、その指を太雅のワイシャツで丁寧に拭った。
だって唾液きたねぇし。


「じゃ、俺行くから」
「え、ちょ・・・!?」

指を綺麗に吹き終わってかた踵を返す、太雅は焦ったように口を開いた。

「なに?」
「何じゃねーよ!火ぃ付けたんだから責任とれよな!」
「は?大体さっきのチョコ、どうせ媚薬入りだろ?ンなもん食わそうとした奴にはオシオキしねぇと、だろ?」
「う・・・」

俺の言葉に押し黙ってしまった太雅を見てニコリと笑うと、俺は笑顔のままゆっくりと口を開いた。


「今日一日オナニー禁止な」




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