気持ち悪いことを言い出した副会長の脛を力の限り蹴り飛ばして、そのまま売店まで大股で進んだ。その甲斐もあってか売店まですぐにたどり着き、俺は無事袋を買うことができたのだ。

それにしてもまさか俺に親衛隊ができるとは。つうか全然気付かなかった。
だって他の連中の親衛隊とか見てるとよ、キャーキャー言って騒がしいじゃん?でも俺の親衛隊は騒ぐどころか姿さえ現さねぇ。何でだ。


「おう、兎丸ー」
「ん?ああ、北川か」

親衛隊のことを考えながら歩いてると、何時にも増してホスト具合に磨きがかかっている担任の北川に会った。こいつが廊下歩いてるっつうことは、もうそろそろSHRが始まるっつうことだな。

「おま、先生を付けろ先生を」
「はいはい、北川センセー」
「お前ほんと可愛くねぇよな。・・・つうかその薔薇は何だ」

呆れたようにため息を吐く北川を睨み付けていると、不意に持っていた薔薇を指摘された。
いや、まぁ聞かれるとは思ったけどな。うん。


「貰った」
「誰に?」
「副会長」

面倒だったので簡潔に答えると、北川は副会長という単語を聞くなり目をまん丸にさせて、その後すぐに眉を寄せた。

「・・・お前って奴は副会長まで虜にしたのか」
「俺ってばモテモテだからな」
「顔は平凡なのに・・・」
「うるせぇエセホスト」

北川のつま先を踏付けながら言うと、北川は踏まれたつま先を押さえながら涙目で睨んできた。


「踏むことねぇだろ!」
「いちいちうっせぇな。三十路がはしゃいでんじゃねぇよ」
「まだ二十七だ!」
「四捨五入したら一緒だろ」
「ちげーよ!」

俺がからかう度に食いかかってくる北川に堪らず噴き出すと、北川はほんのりと頬を赤く染めた。

「笑ってんじゃねーよ・・・」
「わりぃわりぃ。からかいすぎたな」

そう言いながらも可笑しいもんは可笑しいわけで、くつくつと喉を震わせていると北川の廊下をあるく速度が速くなってきた。

拗ねた?


「拗ねんなって」
「・・・拗ねてねーよ」
「拗ねてんじゃん」
「・・・」

まるで子供のように拗ねる北川にさらに笑い出しそうになったが、そこは頑張って耐える。ズンズンと廊下を突き進む北川の目の前に立ち止まって、俺はにっこりと微笑んだ。


「テメェも俺の、虜だろ?」
「は、・・・むっ!?」


何か言おうとした北川の口を俺の唇で塞ぎ、驚愕に目を見開いている北川をジッと見つめながら、俺は北川の唇をベロリと舐め上げた。

「・・・・」

呆然と立ち尽くしている北川を見て耐えきれなくなった俺は声を上げて笑い、俺はもう一度微笑んだ。



「ハッピーバレンタイン!」


end

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