太雅の悲痛な叫び声を背中に浴びながら、俺は颯爽と売店へ向かうことにした。
太雅も太雅で俺の言う事なんて聞かずに抜けばいいのに、どうせアイツのことだから俺の言葉通り自分で弄らず我慢するんだろうな。
ほんと馬鹿。

そんなことを考えながら人通りの少ない廊下の角を曲がると、何かふんわりとしたものとぶつかってしまった。
突然の衝撃に咄嗟に目を瞑ると、鼻腔をくすぐる甘い香り。この匂いは・・・


「・・・薔薇?」
「おや、悠介君じゃないですか」


俺が呟いたのと同時に耳元で囁かれた声に瞬時に身体を離すと、そこに居たのはいつもの胡散臭い笑顔を浮かべた副会長だった。・・・なぜか真っ赤な薔薇の花束を抱えて。

「それ・・・」

目をぱちくりとさせながらその真っ赤な薔薇を指差せば、副会長はにっこりと笑いながら言った。


「ああ、この薔薇は悠介君に差し上げようと思って。ほら、今日はバレンタインでしょう?親愛なる貴方に僕からの細やかな贈り物です」
「はああ?」

はいどうぞ、と言って差し出された薔薇を思わず受け取ってしまったが、ぶっちゃけまじいらねぇ。花を愛でる趣味なんてねぇし、まぁチョコよりはマシっつったらマシか・・・?


「つうかこれ、もしかして教室まで届ける予定だった?」
「もちろんそうですよ?放課後でもよかったのですが早く悠介君に渡したくて」


そう言って微笑む副会長の顔はまさに恋する乙女。
でももし教室に届けに来ていたら遠慮なくぶん殴ってたぞ。

俺に薔薇を渡したことで満足そうに微笑む副会長をチラリと見上げ、俺は大きくため息を吐いた。

こんな顔されちまったら、受け取るしかねぇじゃねぇか。


「あー、まぁ、ありがとな?」
「!!!」

何となく気恥ずかしくて薔薇の束ん中に顔を埋めながら言うと、副会長の息を飲むような音が聞こえた。
不思議に思って副会長に視線をやると、茹で蛸みてぇに顔を真っ赤に染めた副会長が目をまん丸にして俺を見つめていた。

「な、にその顔」
「・・・れた、」
「は?」

小さな声で呟かれた言葉が聞こえなくて、眉間にシワを寄せながら聞き返すと副会長顔を真っ赤にしたまま俺を指差した。


「デレた!!!」
「・・・は?」

いきなり大きな声で叫ばれて思わず顔を顰めてしまう。つうか何?デレた?
・・・意味がわかんねぇ。

訳がわからないまま副会長を見つめていると、突然薔薇を持っていない方の手を両手で掴まれ、やけに熱の篭もった目で見つめられた。



「お返しは体で」
「死ね」



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