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「いやいやいや、ちょっとマテ。色々突っ込み所満載なんだが」
「だから殴れって言ってんだろーが!」
「テメェ頭打ったのか?とりあえず病院に行け」



訝しむような目付きでそう言うと、不知火は不機嫌そうに顔を顰めた。
いや、そんな顔されても全く意味が分かんねぇし。つぅか顰めるのは俺の方だろ、普通。


顔を顰めた不知火の瞳からは何の感情も読み取れず、俺は腕を組んだまま不知火を見つめていた。すると不知火はがたりと音をたて椅子から立ち上がり、俺の座っている方へと近寄ってきた。

・・・何なんだ一体。




不審に思って不知火を見上げていると、強く手を引っ張られその場に立たされる。




「なに?」
「・・・・殴れよ」
「お前頭おかしくなった?元からか?」
「いいから早く殴ってくれ!」




何を言っても殴れとしか言わない不知火に、俺はちょっとばかり腹が立っていた。それにこのままだと埒が明かないので、不知火に「歯ぁ食いしばれ」と一言だけ呟いて、握りしめた右の拳を不知火の頬に思い切り叩き付けた。



「・・っぐ・・・・!」


思いのほか力を強く入れすぎたのか、拳の勢いのまま不知火は床に尻餅を付いた。
そんな不知火を見下げながら、俺は自分の拳を見つめて小さく唸った。




「レスラーは拳で殴るの反則なんだっつぅの・・・」




言った後に自分の言葉に後悔しつつ、不知火の様子を確認する。
案の定不知火は殴られた左頬に手を添え、黙ったまま地面を見つめていた。俯いてるその体制からは、不知火の表情は分らない。

余りにも静かすぎてちょっと心配になったので、何か声をかけようと口を開いた瞬間、俺は自分の耳を疑った。








「・・・イイ・・・・・」
「・・・あ?」





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