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部屋に連れ込んだのはいいが、不知火は依然として喋ろうともしなければ動こうともしない。とは言ってもつっ立って居られても邪魔なだけなので、俺は不知火の肩を押してソファーに座らせた。
されるがままの不知火を横目に、俺は夕飯の支度に取り掛かるためキッチンへ向かう。
・・・これってやっぱ、不知火のも作った方がいいのか?
とは思ったものの、不知火は俺のことを嫌っているだろうし、嫌いな奴の手料理なんぞ食べたくないだろうな。でも自分だけ飯食うとかさすがに気まずいだろ!俺だってそういうこと考えたりするんだぞ!
まぁ一応聞くだけ聞いてみよう。いらねぇって言われたら、遠慮なく食べよう。
「なぁ、不知火。お前飯食った?」
「・・・まだ」
あ、返事した。
「ならよぉ、俺今から飯作っからお前も食う?味に保証はねぇけどな」
俺の言葉に不知火は鋭い目を少し見開いたあと、何を言ってるのか分らない、といった表情で眉間にシワを寄せた。
まぁ確かについさっきあんな事があったって言うのに、わけ分かんねぇよな。でも俺はよ、過ぎたことは気にしねぇ質なんでな。つぅか俺も蹴ったりしたし、プラマイゼロ的な?
「食うのか食わねぇのか。ちなみに今日の晩飯はカレーだから一人分も二人分も変わんねぇよ。ま、お前に遠慮をするって心があるのかは知らねぇけど」
「・・・・食う」
「あ?」
「食べるっつったんだよ!」
うっすらと目元を赤らめて怒鳴る不知火。
その姿が何となく気性の荒い野良犬を手懐けたみたいで、面白くて少し笑った。すると不知火はさらに顔を赤らめて、フンッと鼻息を荒くさせた。
冬吾先輩とは種類が違うが、不知火も何だか犬っぽい奴だな。冬吾先輩が忠犬なら・・・不知火は駄犬ってとこか?
ハッ、そう考えたら不知火が可愛く見えてきた。
「テメッ、何笑ってんだよ!」
「あ?わりーわりー。テレビ付けてもいいから、イイコして待ってろよ」
「ガキ扱いすんじゃねー!」
眉間にシワを寄せながら怒る不知火の頭と尻に、どうしても耳と尻尾の幻覚が見えてしまい、不知火にバレないようにこっそり笑った。
つぅかこの状況、一体何なんだろうな・・・。とりあえず今は飯作ることに集中すっか。
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