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泣いているチワワの中の真ん中の奴の目元に、そっと指を寄せる。
その行為に驚いたのか、チワワはぴたりと涙を止めた。それを見計らって涙の跡を持っていたハンカチで丁寧に拭いてやる。

もちろん、後の二人も。




涙を拭き終わると、チワワ達は何が起こったのか解からない、といった表情をしていた。その顔が可笑しかったので、つい口元を緩めてしまう。






「っ!!」






俺が笑うとチワワ共は吃驚したように目を見開き、顔を赤らめた。
怒ったのかどうかは知らないが、ゴリラの赤面と違い、顔が女っぽいだけあってチワワの赤面はほんのすこしだけ可愛いと思えた。

こんなのに俺と同じモノが付いてると思うと、俺は何だか複雑な気分になる。




っと、今はそんな事より・・・。







「さっきは悪かったな。別にテメェらに怒ってる訳じゃねぇから」
「・・・え?お、怒ってないの・・・?」
「あー、まぁ今は」
「・・・っ」




俺の返答にまた身体をビクつかせるチワワに少し笑い、ミルクブラウンの髪を優しく撫でた。




「そんなビビんな。今は怒ってねぇっつったろ?テメェら親衛隊はこれが仕事みてぇなもんだし、ホントに会長が好きだからやったことだろ?あの俺様の何が良いのか分かんねぇが、他人の恋愛事に足突っ込みたくねぇしな」
「じ、じゃぁ許してくれる・・・の・・・?」
「今回は、な」




そう言った俺にチワワ達は顔を明るめたが、俺はそれを吹き消すかのように低い声を出した。





「ただし」
「・・・っ」




さっきまでと明らかに声色の違う俺に、チワワ達はまた怯えた目で俺を見る。
その目を見返しながら、俺はゆっくりと一人のチワワの耳元に唇を近付け、吐き出すように呟いた。






「次やったら、オシオキ・・・な?」
「っ!」





ビクンっと肩が跳ねるのを確認して、俺はそっと顔を離した。
そして唇の片端だけをくつりと吊り上げ一言。





「返事は?」
「・・・っ、はい・・・」





返事を聞いた俺はにこりと微笑むと、もう一度チワワの頭を撫でてやった。




「イイコ」





それだけ言うと、俺は顔も見ずにその場から立ち去った。
後ろでうっとりと顔を赤らめて俺を見つめるチワワ達に、俺は気付くことはなかった。




その日を境に、「兎丸親衛隊」ができたのを、今はまだ誰も知らない。






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