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今まで浮かべていた笑みを消し去り何の感情も持たない顔でそう言えば、会長は眉間に皺を寄せ押し黙った。
そのままお互いに口を開くことなく見つめ合うこと数十秒。
先に口を開いたのは会長の方だった。
「・・・・退学だ」
「あ?」
「退学だと言ったんだ」
漸く口を開いたかと思えば・・・・、会長は本当に救いようのない馬鹿だった訳だ。
「退学?ハッ!上等じゃねぇか。・・・ま、出来るもんならなァ?」
「・・・・・」
「俺はそこで意識ぶっ飛ばしてる奴のせいで全校生徒から虐められてるんだぜ?それを考えたら蹴りの一発や二発可愛いもんだろ。今こうしてテメェを床に押し付けてんのも立派な正当防衛だしなァ。ちなみに証人はそこの副会長。・・・ほら、退学させてぇんだろ?やってみろよ会長サマ」
「・・・っ」
俺の言葉に腹立たしげに唇を噛む会長。いくらオツムの弱い会長だからと言って、俺が言っていることが正論だと分かったんだろうな。
停学ならありえるけど、退学はさすがにねぇよ。
唇を噛んだままの会長を一睨みした後、俺はゆっくりと押さえ付けていた手を外し立ち上がった。
外した瞬間殴りかかってくるかと少し警戒していたが、それはいらない心配だったらしい。
何事もなく立ち上がりそのまま扉まで足を進める。
途中で副会長からの視線を痛いほど感じたが、何となく面倒臭いのでスルー。
ドアノブに手を掛け捻ろうとした所で、会長から声がかかった。
「・・・・流星は理事長の甥だ」
口を開いたかと思えば、・・・くだらねぇな。
「ご忠告ドーモ」
背中を向けたままヒラヒラと手を振ったあと、俺は漸く生徒会室から解放されたのだった。
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