「おーい、副会長?」
双子会計が去っていった後、取り残された俺は未だ手を縛られたまま。
いい加減腕もだるいし双子にキスされた唇と頬も拭いたいのに、副会長は扉の前で俯いたままぴくりとも動かない。
何だって言うんだ。
早く腕のネクタイ解いてくれねぇかな、なんて思いながら副会長を見つめていると、今まで全くもって動かなかった副会長がゆったりとした動作で俺の方に向かって歩きだした。
・・・何か様子おかしくね?
「副会長?」
腕を縛られているこの状況で俺が不利なのは明らかだ。だから副会長の機嫌を損ねないようになるべく下手に出たところで、俺は漸く副会長の異変に気が付いたのだった。
「・・・何でそんな顔してんの」
「・・・・・」
俺のすぐそばまで来た副会長の顔は、今にも泣き出しそうなほど歪んでいた。
正直副会長がこんな顔をする意味がわかんねぇ。いくら新歓のときに誤解が解けたからといって、副会長とさほど仲良くなったわけでもねぇし。つぅか双子会計に犯されそうになっただけで副会長が泣きそうになる必要なくね?
訳わかんねぇ。
訳わかんねぇけど、泣きそうな副会長を放っておけねぇ俺は甘いのだろうか。
「副会長、手ぇ外せ」
◎