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「そっち行ったぞー!捕まえろ!」
「無理だ、あいつ速い!」
「下から回り込んで挟み撃ちだー!」


鬼たちの怒声を背中にヒシヒシと浴びながら、俺は振り替えることなく走り続ける。
時々副会長の荒い呼吸が聞こえるが、そんなもん知らん!


徐々に離れていく声を耳にしながら曲がり角を曲がれば、少し離れた位置に見慣れた顔のそいつが居た。


「あ、悠くん」


・・・そう言えばアイツもサッカー部だったな。
凌空が俺を捕まえる気があるのかは知らねぇが、何となく副会長と手を繋いでいるこの状態を見られるのは不味い気がする。
かと言って後戻りはできねぇし。

どうしたことかと顔を顰めていると、凌空は両手を広げながら俺の方へ駆け寄ってきた。


「悠くううぅぅうううん!」
「き、きもい!」


うん、なんつうかマジでイケメンが台無しみたいな?余りのキモさに体をくるん、と回転させて蹴りを放つと、凌空は面白いほど簡単に飛んでった。
・・・と思ったのに!


「なっ!?」
「ふふふ、俺があの頃のままだと思ったら大間違いだぜ悠くーん!」
「あ、ありえねぇ!」


何とも信じられねぇことなんだが、俺の放った蹴りを凌空はいとも簡単に掴んでしまったではないか。
あの凌空が。

あのデブで運動神経皆無でトロ臭くて頭の悪い凌空が。

俺の蹴りをいとも簡単に受け止めるなんて。



「ありえねぇぇえええ!!」
「あべしっ!」



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