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「新歓は明後日に控えているが、騒ぎすぎて怪我とかすんなよ。これで一限目は終わりな、余った時間は自習しとけ。・・・兎丸は俺と一緒に来い」
「・・・・・は?」
クラス全員のクジ引きが終わりやたらと話し掛けてくる凌空をあしらっていると、北川が教卓を持っていた日誌で軽く叩きながらそう言った。
・・・まさかここで俺が呼ばれるなんて思ってもいなかった。
ぶっちゃけ面倒臭くて動きたくねぇけど、仕方ねぇな。
そう思って立ち上がり北川の方へ向かおうとすると、凌空に強く腕を引っ張られ思わずよろめいてしまった。
「あっ、ぶねーな!引っ張ってんじゃねぇよ」
「・・・・・」
「何黙ってんだテメェ。つぅか手ぇ放せって。・・・おい、凌空?」
掴まれた腕をどうにかしようと揺すりながらそう言うも、凌空は俯いたまま口を開こうとしない。
不審に思った俺は凌空の表情を伺おうと顔を覗き込んだんだが・・・、
「んむっ!?」
覗き込んだ途端後頭部を引き寄せられ唇に柔らかい触感。あまりにも突然すぎて一瞬意識が飛びそうになったが、事態を把握した俺は慌てて体を離そうとする。
クソッ、何が楽しくて野郎とキスしなけりゃいけねぇんだよ・・・!
何とか体を離そうとするが、体制のこともあってか上手く腕に力が入らない。
クラスの連中の悲鳴やら何やらが聞こえるし息苦しいし、マジで何なんだよコイツ!
いい加減酸素が恋しくなってきた頃、ちゅっという可愛らしいリップ音を響かせて凌空の唇が離れていった。
「ぷは!おま、何しやがんだ!馬鹿か!」
「えへへ、悠くんの唇柔らかかったなー!」
「!!!」
にこにこと頬を弛ませる凌空についに我慢の限界がきた俺は、俺の力の限りを尽くし凌空の鳩尾へと拳を放った。
「うぐっ!!」
蛙が潰れたような声を出して腹を押さえながらもがく凌空を尻目に、俺は大股で北川の元へと近付いた。
「俺に用があんだろ、さっさと行こうぜ」
「お、おお・・・・」
引きつりながら返事をした北川をチラリと見やり、教室中の視線を浴びながら俺は教室から出ていった。
その視線の中でただ一つ、燃えるような視線で北川を射ぬいている者が居るなんて知るよしもない。
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