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「・・・兎丸だ」
「あ?」
何故かシン、となってしまった空気に耐えかねてそう呟くと、不知火は意味が分からんと顔を顰めさせた。
「俺の名字だよ。テメェに呼び捨てされっと何かキメェし」
吐き捨てるようにそう言えば、途端に不知火の顔が暗くなった。
「・・・・、・・・か」
「は?聞こえねぇ」
「名前で呼んじゃ、だめなのか・・・?」
・・・・・は?
思いがけない言葉に俺は何も言えないままアホみたいに口を開いていたが、今にも泣きそうな不知火の顔を見て思わず吹き出してしまった。
「なっ!?笑ってんじゃねーよ!」
「ふは、わりぃわりぃ」
泣きそうな顔から一変して、顔を真っ赤にさせ怒る不知火にまた吹き出しそうになったが、必死にそれを抑えて髪を掴んでいた手をゆっくりと離す。
そしてその手を不知火の頭の上に優しく乗せ、そのままやんわりと撫でた。
「っ!?」
「そんなに俺の名前が呼びてぇのかよ、泣きそうな顔しやがって」
「う・・・、うるせー!」
「はいはい、テメェがな」
ぽふぽふと頭を叩いて嗜めると、不知火はまた顔を真っ赤にさせて怒鳴ろうとしたが、それを遮るように俺は言った。
「いいぜ」
「・・・あ?」
「名前、呼ばせてやってもいいぜ。
た、い、が、ちゃん?」
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