短編集 | ナノ





「会長…佑太くんはさー、最初から俺達に頼ってたらこんなことにはなってなかったんだよ」

チュ、とリップ音をわざと鳴らして高峰の首筋にキスを落とし、痕を残す。

「俺、何度も言ったよね…佑太くん。俺ら親衛隊はいくらでもなんでも手伝うよ、って。それなのにへんな意地張っちゃって…俺らのこと頼ってくれたら会長をやめる必要も、こんな風に犯されることも、その逆もなかった。――ほぉんと、馬鹿な人…」

「う゛ぁ゛ッ」

元親衛隊長は高峰の首筋にある酷く目立つ赤い痕に思い切り歯を立て噛んだ。その様子はまるで映画でよく見る若い女の生き血を啜る吸血鬼のようだ。元親衛隊長の歯に高峰の赤い血が少しつく。どれだけ強く噛んだんだ、と高峰の顔が痛みに歪んでそう思った。

「今すぐに高峰から離れろ!!この場にいる全員退学にされたいか!!」

「ふはっ。なぁにをそんな怒ってんの委員長?風紀が仕事してないことぐらいしってるよ?そんなんで俺ら退学にできんの?」

「ああ、できるさ。―――俺は、この学園の風紀委員長だからな」

…本当は、こいつが言った通り風紀としての仕事もしてない俺に退学にはできないだろう。
でも、それでも。この立場を利用してでも高峰を守りたい。…高峰がこんな目にあってしまった原因の俺に、そんなこと言えたことじゃないが。

「…つまんね、萎えた」

すると元親衛隊長は不機嫌そうに少し萎えたペニスを高峰の中から抜く。高峰はその場で力が入らなかったのか倒れた。
ぞろぞろと大人数が教室から出て行く。俺はすぐに高峰に駆け寄り抱き起した。

「おい、高峰!」

「…なが、せ…見るな…」

殴られたりもしたようで口の端が切れ、目は虚ろで涙や鼻水や精液で濡れた顔はぐしょぐしょだった。それでもまだ意識はあるのか、そんなことをガラガラの震えた声でそう言った。

そんなに俺に介抱されるのが嫌なのか。
全身ガクガクに震えて立ち上がる力すらないくせに、いくら俺のことが嫌いだとは言えこんな時ぐらい頼れよ。
――黙って、お前は俺に助けてもらえよ。
周りにボロボロに破かれた高峰の制服を見て俺は自分が着ていたブレザーを高峰の肩にかけてやる。

「…たか、みね」

自力で座る力もない高峰は俺に体を預けてきた。左肩に高峰の額が置かれる。そんな高峰に俺はどうしてやればいいか分からず、黙って肩を貸す。すると高峰はか細い嗄れた声で「ごめん」と呟いた。

謝らなければいけないのは、俺じゃないか。なんでお前が謝るんだ。今まで苦労させっぱなしで、こんなつらい思いもさせて、お前は悪いことなんてこれっぽっちもしてないじゃないか。なんで、なんで、なんで。

冷たく濡れた高峰の体を、俺は抱きしめてやれなかった。


end.


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