短編集 | ナノ






「…なんでそれをさ、俺に言うの?俺の家どうやって探しだしたのかは知らねぇけど。俺、お前のことが大っっっっっ嫌いだから2年前、お前の前から消えたの。それ分かってる?わっざわざそれを家にまで言いにきやがって…」



本気で悩んでるらしいハルは―まあこんな重要なこと軽いノリで言われたら殴るけど―俺の厭味に対して反応せずか細くうん、と頷いた。気持ち悪い。こんなテンションのハルなんて見ててむかつく。

なんだよ、俺がお前の浮気途中…他の奴とセックスしてる最中に怒鳴り込んでも「唯希いつのまに来てたの?」なんて言いながら下で女(男のときもあったけど)を俺にかまわず啼かせながらヘラヘラしてたくせに。



「2年ぶりに俺の前に現れたと思ったら…女孕ませて結婚?自業自得だろ馬鹿。浮気して浮気して浮気して…俺からしてみればお前なんかざまーみろって話なんだぞ」

「…うん」

「ああ!もう!その弱っちい返事やめろ!大体!お前のそんな話聞いて俺が同情でもすると思ったのかよ!!弱いところ見せたら俺がまたお前のこと惚れるとでも思ったのかよ!!それで俺にその結婚の問題を解決させようとでも思ったのか!!」



キレた俺はハルに怒鳴りつける。くそ、お隣さんに聞こえてるんだろうな。この家、壁薄いし。ハルはと言えば黙りこくって俯くだけだ。

…ありえねぇ。本当に俺を利用する気だったのか。



「…今すぐ出て行け!!お前の顔なんか見たくない!!」

「……今日、ここに来たのは結婚の相談なんかじゃ、ない」

「ンなこと今は聞いてねぇッ」



ハルが重い顔を上げた、と思ったら。



「………お前に、謝りにきた」



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