天邪鬼の猫。 | ナノ






「澪!お前何してんだよっ!!」


そう言って凛くんは持っていたハンカチで顔を拭ってくれる。…ありがたいけど凛くんが俺に近づけば近づくほどふくかいちょーたちが俺を睨み嫉妬する。こんなんじゃいつまでたっても誤解なんか解けない。俺は俯いた。


泣くな、泣くな俺…!


絶対に人前で泣くもんか。泣いてたまるか。


「凛、ンなヤツに近づくな。何されるか分かんねーぞ」

「柚木!柚木までそんなこと言うなよっ!!涼は俺の親友なんだぞ!!」

「新条の言うとおりだぜ?凛、こっち来いよ」

「そんな楓まで…っ!」


俺はぎゅっと握り締めていた手の力を和らげて右頬に触れる凛くんの手をハンカチごと優しく払った。すると凛くんは耳元で大声でどうしたんだよ、と言う。そしたらふくかいちょーたちはその声に反応してかまた俺を睨んだ。反射的にビクリ、と激しく俺の肩が揺れた。汚いものを見るようなふくかいちょーたちの冷たい目線が俺を射抜く。


どうすればいいんだよ。

俺はただ誤解が解きたいだけなのに。前みたいな楽しかった頃の生徒会に戻りたいわけじゃない。篠がまた俺と付き合って欲しいわけじゃない。誤解を解きたいだけなんだ。わがままを言えばあの頃に戻ってみたいとは思うけど、戻れないと分かってるから。


俺にはセフレなんかいないんだよ、朝陽に対して恋愛感情の好きって気持ちなんか持ってないんだよ、たったこれだけのことがどうして伝わらないんだろう。たったこれだけのことを伝えるのに、どうして俺はこんな悔しい気持ちに押し潰されそうになるんだろう。


「お前ら好き勝手言いすぎだぞ!涼は俺の親友だ!俺の親友を悪く言ったら許さない!!」


凛くんが俺を庇うような優しい言葉を掛けるたび、俺は俺の事がどんどん嫌になってく。凛くんがいい子なのは知ってる。少しわがままだとは思うけど今だってハンカチで俺を優しく拭ってくれた。言葉の1つ1つに悪気があって言ってるわけじゃないのだって分かってる。

それなのに分かってるのに凛くんを自分のエゴで嫌な人にして、憎んでしまう。凛くんも俺の事をふくかいちょーたちみたいに冷たい目で見てくれれば、俺はこんな罪悪感なんか無く凛くんを恨めたのに。


「――…俺、凛くんが嫌いだよぉ。それに俺…凛くんと親友になった覚えはないから」


だから、俺のことを嫌いになってよ。凛くんが俺を嫌いになってくれさえすれば俺は凛くんのことをこんな感情を持つことなく恨めるんだから。

―――――ずるくて汚い俺を笑えよ。



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