天邪鬼の猫。 | ナノ






完全に黒く染まって点々と星が散らばる空を窓から眺めながらほんの少ししか進まない仕事に溜息をつきそのまま机に突っ伏す。携帯を開けば時間は11時だった。うげ、もう食堂閉まってんじゃん。…めんどくさいから今日はご飯なしでいっか。一食くらい食わなかったって人間しなないし。

ガチャ、とそのときドアノブを回す音が聞こえた。篠かな?執務室の入り口に目をやれば凛くんを筆頭としたふくかいちょー、双子書記、一匹狼の新条や見慣れない茶髪の爽やかくんまでいた。ああ、もう。呆れを通り越してどうでもよくなってくる。


「あれー、会計がいるー」
「邪魔者は帰ってよねー」


きゃはは、と声を合わせて笑う双子にイラってきた。邪魔者ってちょっと失礼だろ。


「雄真!奏真!そんなこと言うなよっ!!涼は俺の親友なんだぞ!!」

あり、いつの間に俺って凛くんの親友に昇格したんだ?すんごい願い下げなんですけども。

俺はそんな彼らから目線を逸らし携帯をカチカチと弄る。あ、朝陽からメールきてた。
内容はまた夏休み中に仕事関係なしで会おうって感じの。


「凛を無視するなんていい度胸ですね!」


ビシャ、と頭から降り注ぐ冷たい液体の感覚。何が起きたのか一瞬理解できなかった。手に持っていた携帯の真っ暗な画面に水に滴る俺の顔が映ってポタ、とまだ手をつけていない書類に茶色のシミが滲むのが見えた。

ああ、俺、ふくかいちょーにコーヒー頭からぶっかけられたんだ。…コーヒーが夏バージョンでよかった。凛くんに続きふくかいちょーまで…これがもしホットだったら俺ほんと大火傷じゃ済まないよ。


「…ちょっとふくかいちょー…いきなりヒドくない?」


俺はシャワー浴びれば済むけどまだ手つけてない書類にまでコーヒーが掛かってる。滲みすぎて書類の文字がぼやけて読めないし。これじゃ作り直しだなー…。ホント勘弁してよ。仕事しないんだったらせめて俺の仕事増やさないでよね。ふくかいちょーを睨みつけるとふくかいちょーは俺にコーヒーぶっかけて気を良くしたのかフン、と笑って嘲笑した。


「自業自得ですよ」


別に俺何も悪いことしてないのに。



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