天邪鬼の猫。 | ナノ






「俺、風紀に渡したい書類あるから会いに行ってもいい?」

≪ああ、じゃあ俺は風紀室にいるよ≫

「待っててね、ダーリン!」

≪はいはい≫

くつくつと喉を鳴らして笑う朝陽の声が電話越しから聞こえた。俺はソレに少し気分がよくなって1人でニヤニヤしながら携帯を切って早速、書類を持って風紀室に向かう準備をする。
ガタンと椅子から立ち上がって振り向いた瞬間、心臓が止まるかと思った。


「風紀室へ、行くのか」


いつの間にここに入ってきたんだろう。いつから俺と朝陽の会話いや通話?を聞いてたんだろう。
ヤバイ、ちょーびっくりした。心臓のドキドキが止まんない。


「かいちょー…ちょっと俺行ってくるね」

執務室の扉にもたれかかって腕を組みながらどこか少し切なそうに眉を顰めてこっちを見る篠の姿が俺の目に映る。1人でこの生徒会室に来たらしい。凛くんや他の役員の姿はない。
だからと言って篠の手に書類はないし仕事でもしにきたのかな。2週間前の1件があったおかげか篠を前にしても恐怖心、とか全身の震えとかなくなった。まだ少し緊張はするけどもう怖くない。
俺は篠の横を名残惜しいけど通り過ぎようとしたとき、書類を持っていない左の手首を突然掴まれる。

「!」

いきなり手を掴まれるとかどんなホラーだよ。かなりびっくりした。篠の方に目をやって俺は息を飲んだ。


「…篠…なんで泣きそーな顔してんの…?」

眉を八の字に顰めて、すごく寂しそうだ。篠らしくないそんな表情が、どんどん俺に近づいてくる。珍しいその表情に俺は見入って一瞬何が起きたのか分からなかった。

「ン、むぅ…っ、んん…!」

唇を貪るように吸われ、何をされてるのか理解した途端に篠の舌が俺の咥内に侵入して歯列を舐めまわし、舌を吸われ息ができない。俺の舌と篠の舌が絡み合う。

俺にとってはいきなりのことで頭が追いつかないけどただ言えることは嫌じゃない、ってこと。俺の手首を掴んでいた篠の手は俺の腰に回され、空いてるもう一つの手で俺の後頭部を強く持つ。強く、と言っても乱暴とか、無理矢理とか、そんなんじゃなくてただ俺を離さないように、って感じ。篠の優しいキスに俺は目を閉じた。



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