天邪鬼の猫。 | ナノ




11


(side 篠)


むさ苦しいどこを見ても男だらけの講堂ホールで1学期最後の集会を終え、生徒会室へ向かう。あの食堂の件から数日、俺はあれから涼と会うどころかすれ違ったことさえない。きっと涼は今頃実家に帰ってるんじゃないだろうか。俺は今まで自室で完成させてた書類を生徒会室へ置きに行く。夏休みに入ったから涼とは会わずに済むだろう、涼の涙の一番の原因はこの俺だから。せめて会わないようにしてやらないと。この夏休みは俺はクソジジイが実家に戻ってくると親父から聞いたから帰らないつもりでいる。澪たちは凛が残るから残る、と言っていたが。


ガチャリ、と久しぶりに生徒会室の扉を開き、少し歩みを進めて執務室へ続く扉を開けたとき、そこにいる筈のない涼の姿があった。こいつは実家に戻ってねェのか、目の前の涼はぽろり、元から大きい目をコレでもかと言うほど見開いて食べかけのクッキーを落とした。クソ、この俺と会うのがそんなに嫌か。

「…――何してんだよ」

少し、不機嫌な声になったと自分でも思う。涼はそんな俺にどもりながら休憩してた、と言った。…仕事してた、とは言わないところがコイツらしい。すると涼は俺に何故此処に?と質問を投げかけてきた。書類持ってんだから生徒会室に用あって来たに決まってんだろうが。
予定としては書類を置いて、学園祭についての書類と俺の判がいる書類だけを持ってまた自室に戻ろうと思っていたが変更だ。俺は澪たちの席から書類を数枚手に持ち俺の執務室全体を見渡せる会長席に座る。

少しぐらいならここにいても…涼の傍に居てもいいだろうか。


「…――会計」

涼と呼ぶには罰が悪かった。俺は涼のことを殴り犯したのだから。涼の黒い綺麗に透き通った目と合う。プラチナブロンドの髪が汗で少し髪にへばりついてる。俺と喋るのがそんなに嫌らしい涼はまだどもっていた。

「…今まで生徒会の仕事はお前がやってたのか」

やってなかったら生徒会はとっくにリコールされてるし、歓迎会だって成功していないな。

「聞き方を間違えた。他の役員や俺の仕事まで手をつけたのか」

そうじゃなければ、お前以外が誰がやったと言うんだ。俺は返ってくる答えが分かりながらもそう問うた。
すると涼はぶんぶんと頭を横に振って泣きそうになってた。

「くくく…なんで泣きそうになってんだよ…」

あまりにも涼のその姿が可愛くて、俺は笑ってしまった。



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