天邪鬼の猫。 | ナノ




「好きだ」


生徒会室のあの1件から2週間ぐらい経つ。だんだん夏休みも終わりに近づいて学園祭の準備もある程度進んだ。残りの夏休み全部使えば完璧な出来になること間違いナシ。宿題も全部終わったし、俺は締め切り期限がまだまだの書類を片付けていた。

「はぁー…」

最近は長い夏休みを利用したおかげで効率よく仕事が出来たし、篠も仕事をしてくれるから俺の仕事量が少し減って頭痛の回数も減った。…ような気がしてたんだけど、やっぱ治らないなぁ、頭痛。


蝉の声も今の時期になればどんどん止んで初夏に比べれば少しは涼しくなったんじゃないかな。…気のせいか。やっぱ熱いや。

2週間前、篠と会ったのはそれが最後で当たり前のように今だって生徒会室には俺1人。他の役員がわざわざ仕事しにくるなんて真似はありえないし。すっかり癖になった溜息が俺しかいない生徒会室に虚しく零れた。

去年の今頃はかいちょーんちの別荘で生徒会みんなでバカンスだったのに。俺、今年どこにも行ってない。実家にも帰ってないし、朝陽にも会ってない。


「…電話、しよーかなあー…」

携帯のアドレス帳をカチカチと弄れば無意識の内にさ行の「西園寺篠」の文字を見つめてしまう。…篠に電話しても迷惑だろーな。つか話すこともないのに電話したら余計嫌われるよな。…くそう、篠に会いたい。でも凛くんには会いたくない。

pipipi...

携帯の電子音が鳴り響いてハッとなる。俺は慌てて通話ボタンを押した。


「はっ、はい!?」

≪…涼?≫

慌てすぎたせいで相手を確認してなかった。耳元のこの声は…

「あ、朝陽っ?」

≪ああ、久しぶりだな≫

電話越しの優しい声に少し癒される。朝陽から電話が来るなんてびっくりしたけど。なんかテンション上がる。てか久しぶりに人と喋った気がするんだけど。

「いきなりどしたの?」

≪ついさっき実家から戻ったから涼に連絡しただけだよ≫

「そうなんだぁ。おかえりぃ。会いたいよダーリン!」

≪ただいま。俺も会いたいよ、ハニー≫

「ははっ!」

不覚。朝陽が俺の冗談にノってくれるとは。俺は腹を抱えて笑ってしまう。なんかこの感じもすごい久しぶりだ。



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