天邪鬼の猫。 | ナノ






俺は目の前の光景を見たくなくて、ぎゅっと目を瞑って俯いた。拳を強く握ってカタカタと震える足を必死で押さえようとするけど震えは止まらない。イチャイチャと2人でじゃれ合う姿はまるで別れる前の俺と篠の姿みたいだ。ふくかいちょーとか、双子の2人も今の俺みたく苛々してたのかな。こんな光景見せられて。どんどん嫌な気持ちになってく。

俺、今すごく凛くんに嫉妬してるんだ。


「篠のこと俺ずっと探してたんだからなっ!!」

「ああ、悪い」

「そ、そ、そ、その代わり…っ、その…っ、抱きしめてほしいなぁ…なんて」


冗談じゃない。ガタン、と俺は考えもなしに勢い良く立ち上がった。その拍子にキャスター付きの椅子が思いっきり引っくり返る。生徒会室内にカラカラとキャスターの回る音だけが響いて、篠と凛くんの視線が俺に集められた。


「…っ、ご、め…っ」


あたふたと倒れた椅子を起き上がらせて即座に俺は生徒会室を出ようとするけど、動揺してたらしい俺は机の上に固めていた書類の束を床にバラけてしまった。ああ、もう!恥ずかしい。恥ずかしすぎる。早くこの場所から逃げたいのに。思えば思うほど散らばった書類は拾いにくくなるし、後ろで俺のことを見てるであろう2人を想像すれば顔が沸騰してしまうぐらいに熱くなった。


「…ん」

「え」


パサリ、と俺に手渡されたのは書類の束。俺が落とした書類の殆どを拾って篠が渡してくれた。片膝をついて視線を合わせてくれる。その目は以前に無理矢理犯されたときの怖く鋭い目なんかじゃなくて、懐かしい優しい目だった。


「あ、りがと…っ」

俺は慌ててバッと奪い取るように書類を受け取る。どうしよう、嫌なやつだと思われてないかな。あんな篠の雰囲気を見るのは久しぶりすぎて、俺はどうすればいいか分からなくなって逃げるように生徒会室を飛び出した。心臓がバクバクしてる。羞恥に染まっていた顔は別の意味でどんどん火照った。書類の束を持っていない空いた手で顔を隠すようにして急いで部屋へ戻った。…ホント、途中に誰とも会わなくて良かったと思う。こんなトコロをふくかいちょーや双子の2人に見られてたら笑いの種にされただろう。



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