天邪鬼の猫。 | ナノ






返事がなんて帰ってくるか不安だったけどそれは意外なもので。かいちょーは喉をくつくつと鳴らして笑った。

「くくく…なんで泣きそうになってんだよ…」


篠が…笑ってる…っ


カァ、と顔が赤くなる。久しぶりに見た笑顔だ。…今なら、言えるかもしれない。朝陽や小川くんに恋愛感情として好きとは思ってない。俺の好きな人は、篠だってこと。今頑張れば、誤解が解けるかもしれない。

俺、朝陽のことは好きだけど恋愛感情の好きじゃないよ。
小川くんだって、セフレとかそんな関係なんかじゃないんだ。
みんなは誤解してるけど、俺、セフレなんていないんだ。
俺の好きな人は、篠だけなんだよ。

ぎゅっと拳を握り締めて、ヒュっと息を吸って俺は口を開いた。


「篠――…」

「やっと見つけたぞ篠っ!!!」


ばん、と荒々しく扉を開いて執務室に入ってくる1人の生徒。凛くんだ。彼に生徒会室は一般生徒は立ち入り禁止、なんて言っても意味ないんだろうな。てか前、言ったよね、俺。言葉を遮られたせいか、どんどん苛々が募る。


「会いたかったぁぁあっ!!」


凛くんはそう叫ぶと執務室の扉から会長席まで小走りで駆けて行き、篠に抱きついた。篠は少しよろけるけどソレをちゃんと抱きしめて。傍から見ればまるで恋人同士だ。
凛くんの頬は心なしか桃色に染まって見える。篠だって凛くんを愛しそうに目を細めて笑ってた。

この空間に、俺の居場所なんか在るはずもなかった。



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