天邪鬼の猫。 | ナノ
3
「うわっ!涼!お前体熱いぞ!!」
俺のおでこに手の平を合わせててんにゅーせいは言う。だるいしめんどくさいから手を振り払う真似はしなかったけど。あー…でも確かに額に触れてるてんにゅーせいの手、冷たくて気持ちいい。
「ほら!これ飲め!」
「ンく…っ」
無理矢理にコーヒーを飲まされる。当然だけど飲み物だからいきなり飲まされて飲み込むとか無理なわけだ。
「げほっ」
口から飲みきれずに溢れたコーヒーが首筋を伝う。なんか汗とはまた違った感覚がしてちょー気持ち悪い。つかこれコーヒーがホットだったら俺大火傷してたよね。…やばい、冗談抜きで俺てんにゅーせいが怖いんだけど!
「うわ!何してんだよ!」
君が無理矢理飲ませるからじゃん!って言おうと思ったけどやっぱやめた。俺、このコに口喧嘩勝てなさそうだし。つーか勝てない。
するとてんにゅーせいは自分のポケットからハンカチを取り出して俺の首筋を伝うコーヒーを拭き取ってくれた。
「まったく!涼はおっちょこちょいだな!」
「あ、ありがとぉ…?」
「どういたしまして!」
そう言っててんにゅーせいは笑った。その笑顔を見るとなんだか惨めな気持ちになる。篠もこの笑顔見たんだろうなあ。俺とは全く違うタイプの子。素直で真っ直ぐで篠が好きになるのも無理ないなあ。
凛くんは何もわざと俺にイヤガラセしようと思ってやってるわけじゃないんだ。
本当はいい子なんだ。ただ俺の被害妄想で俺の中でどんどん凛くんを嫌な子にしてるだけの話なんだ。
凛くんについて考えれば考えるほど自分の事が惨めに思えた。
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