天邪鬼の猫。 | ナノ
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もぐもぐと口の中の肉をやっと食べ終えた俺は目の前のぷち騒動を見つめる。てゆーかキッカケは俺なんだけどね。朝陽ちょーすごいんだよ。あの腹黒ふくいいんちょーがちょー悔しそうな顔してんだから。
「凛、会計なんかに優しくする」
「必要なんかないんだからあ!」
「そうです。さぁ、上に行きましょう」
てんにゅーせいはふくかいちょー達に促される。…上って生徒会専用スペースだよね。もう俺何にも言わないよ。ふくかいちょー達にはホント呆れちゃうね。
「嫌だ!俺、涼がこれ全部食べるまで此処を動かない!!」
ちょ、般若みたいな顔してふくかいちょーが睨んでくるんですけど!
うー…コレさすがに全部は食べれないけど1皿だけなら何とか…食べれそうだしね。…てゆーかなんでこんなことになっちゃったんだろ。いちごみるく飲んでたから?こっちは食欲ないのにー…。うえ、こんなこと考えたら余計食べたくなくなってきた。
「凛、会計はほっとけばいい。さっさと上に来い」
朝陽に負けず劣らずの冷徹低音ボイス。でも言葉には棘があって怖い感じがする。俺が昼に襲われてた時もこの声で助けてくれたなあ。そう言えば。なんか随分の昔の記憶に思える。
「かい、ちょー…」
鮮やかな赤の髪が一番に俺の視界に入る。それと同時に安堵して、畏怖した。かいちょーの赤が怖い。あの瞳に捕らえられるのが怖い。でも見慣れたそれはどこか落ち着く。
なぜだか治まったはずの眩暈と頭痛がまた俺を襲った。
「篠っ!」
てんにゅーせいがかいちょーに抱きついた。食堂内はざわめくどころか悲鳴の嵐。
そー言えば、かいちょーがてんにゅーせいにキスした日もこんな風に食堂は煩かったなあ。
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