天邪鬼の猫。 | ナノ
3
(side 篠)
歓迎式当日、開会式の挨拶の為に俺は演説台に立つ。いちいち男が高い悲鳴だしてうるせェ。イライラしながらも手短に終わらせてイベントの開始。
凛の姿も見当たらねェし俺は旧校舎へ行くことにした。クソ、こんなめんどくせェことさっさと終わらせてェ。凛見つけたら捕まってやろう。
開始してから10分、旧校舎をうろちょろしていると前から見慣れたシルエット。
「篠っ!!」
凛だ。凛が少し制服を肌蹴させて俺の方へ走ってくる。様子がおかしい。
「お、俺…っ、襲われて…っ!!」
親衛隊の奴らか。じゃあ凛が集会の時に見当たらなかった理由はソレか、と俺は勝手に納得する。だが襲われた割には怪我もヤられた痕跡のようなモノがない。
「無事だったのか」
「ああっ、涼が助けてくれたんだっ!!でも涼、今頃襲われてるだろうから俺が今から涼の為に風紀の人呼んでくるんだ!!」
なら俺に構わず行けばいいのに、と思ったのは内緒だ。…いや、待て。そんなことより。
涼が襲われてる?全身の毛が逆立つような感覚が俺を襲う。涼が、涼が、別の男に襲われる、なんて。
「…場所はどこだ」
「え…っ?び、美術室!」
俺は全速力で美術室へ駆け出した。涼が別の男にヤられんのも、あの風紀の野郎に助けられんのも甘えんのも、そんなことさせてたまるか。
何故俺はこんな風に思ったのかよく分からなかったが、愛しい凛まで犯されかけたというのに1人残してあんな奴の為に…。―涼の為に無我夢中で走ったのかは俺には分からなかった。自分で自分が分かんねェんだ。
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