天邪鬼の猫。 | ナノ






朝陽に聞きたい事が多すぎて何から聞けばいいのかわからない。

篠たちが生徒会辞めさせられるってホント?なんで辞めさせられるの?みんなが仕事してない、ってことが理由なら俺なんでもするよ。仕事量どんだけ多くても全部締め切りまでには間に合わせるし他の委員会に迷惑かけてるなら謝りに行くから。


「…あ、さひ…っ」

「――俺、夜ご飯まだなんだ。よかったら食堂で話さないか」


話が長くなりそう、って朝陽は思ったらしい。俺はその言葉に首を縦に一度だけ振って先を歩く朝陽の少し後ろを歩いた。食堂まで行く間は豪華なふわふわの絨毯の上を歩く履きなれたぼろっちい俺の靴しか見えなかった。




**

食堂についてから俺はいちごミルクだけ注文。お腹すいてるけど食べれる気がしない。そんな俺とは反対に朝陽は和食定食頼んでた。見た目どおりでかいちょーのことを思い出す。かいちょーもよく和食定食食べてたからさ。
…あ、勿論今は生徒会専用スペースじゃなくて一般スペースで食べてる。生徒会専用スペースに朝陽を入れるわけにはいかないじゃん?規則違反だし。

…それより何から、聞けばいいんだろう。


「最近の生徒会ってちゃんと機能してるよね」

「前はあれだけ転入生に付いて回ってたのにね。今日の歓迎式、すごく楽しかったな。アレって生徒会企画でしょ?」

「えー今でも結構転入生と生徒会の皆様一緒にいること多くない?今日だって閉会式で―――」


近くの席で可愛い系の男子達がそう噂してた。…この学園の食堂は普通の学校の女子トイレみたいにいろんな噂話が飛び交う。俺、最近食堂にきたら生徒会絡みの噂をよく耳にするから悲しいよ。


「あの話は…?」

朝陽は“生徒会が機能している”って言葉に少し疑問を覚えたらしい。それもそうだ。これは俺が流した噂だもん。
ホラ、いつだったか忘れたけど随分前に俺の親衛隊のたいちょーさんの小川くんに頼んだやつ。

『小川くん、ちょっと噂流しといてくれる?』
『?』
『耳貸してー。あのね、“生徒会役員は全員職務を怠ってない。だから転入生は職務の件については関係ない”って。お願いできるかな?』
『涼さまのご命令とあらば!』
『ふふ、命令なんて人聞き悪いなぁ。よろしくね』

って。うん、懐かしい。この噂流すの頼んだんもこの食堂だったなあ。そー言えば。…物思いに耽ってる場合じゃないな。


「あ、のさー…。あの噂流したの、俺なんだよねぇ…」

「涼が?」

「…俺ね、いつかこのままじゃ生徒会がリコールされる、って…予想はしてたよぉ。かいちょーたち、ずっと仕事放棄してるもん。他の生徒に噂されても仕方ない、って俺だって思う。
でも…っ、だからって他の生徒が生徒会のことを…生徒会役員の事情を何も知らないで噂するのは気に食わないんだぁ」


篠はすごくプライドが高くて、仕事だって誇りを持って真面目にやってて、そーゆートコずっと俺、憧れてたし。

みんなの中で一番仕事終わらせるのが早かったふくかいちょーには俺の仕事手伝ってもらったもん。かなり迷惑かけたなあ。

双子書記はいつも締め切りに追われた生徒会役員総出のピリピリした雰囲気を和ませてくれたんだ。それがすっごい楽しいの。締め切り間近だけどふざけあって、ギリギリだったもんなあ。


篠にも、ふくかいちょーにも、双子の2人にも、どんだけ嫌われてたとしても俺は彼らのことが好きなんだ。


「お願い…朝陽…っ。今の生徒会を…壊さないで…!!」



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