天邪鬼の猫。 | ナノ




「ありがとね」


「私たちを捕まえた凛には凛が望むものを差し上げましょう」


舞台上にいるのは生徒会役員と、てんにゅーせい。
ふくかいちょーはマイク片手にてんにゅーせいの肩に腕を回して全校生徒に向かってそう言う。…どーせふくかいちょーも双子書記もあのてんにゅーせいの元へ自分たちから捕まりにいったんだろ。…かいちょーだって例外じゃない。

俺はガンガンと痛む頭で考えながら生徒会室のイスには劣るがまあそこそこ綺麗な座りやすいイスに足を組んで座ってた。

眩暈がひどくて顔は上げられなくて冷や汗も止まらない。



「お、おれ…っ、何も望まないからこれからも篠たちと一緒に過ごしたいんだ!」


あんだけヒドイ目に遭わされた癖にてんにゅーせいがかいちょーのことを下の名前で呼ぶとどうしても反応してしまう。そしてその直後に嫌悪感を覚えた。

…ん?ちょっと待って。「これからも一緒に過ごしたい」?…って事はあのてんにゅーせいは生徒会室にこれからも来るってこと?…俺、教室と生徒会室と自室と食堂の往復の毎日が殆どだったのに…生徒会室は極力行かないでおこう。つーか何も望まないから、ってもうそれ望んでるよね。かいちょーたちと一緒にいたいって。


「では生徒会長からの閉会の挨拶です――」


それからは会長のたった一言の挨拶、風紀委員長である朝陽の挨拶、長ったらしい校長の挨拶と話があって閉会式が終わり俺は今生徒会室にいる。ついでに1人。今日は歓迎式だったから対して仕事は然程溜まってない。厚さ2cmほどの書類の束とデータが入ったUSBメモリを持って自室に戻る。ああ、もうホント体がだるくて死にそう。自室までの距離がホント遠い。遠すぎる。あー頭もグラグラするし真っ直ぐ歩けない。つーか俺歩けてる?自分で自分が分かんない。


「あ〜っ!くそう!俺はしんどくない!」


ゴン、と全力で壁を殴ってみる。うん、痛いだけだ。ちょーヒリヒリする。…コレ、かいちょーとか先代のかいちょーがやったら壁にヒビ入るんだろーな。俺はどんだけ非力なんだ。…ちょっと鍛えてみようかなあ。腹筋ムキムキにしてゴリマッチョになんの。…気持ち悪いだけだな、とか考えつつ何度か書類を床にばら撒けちゃっては拾っての繰り返しでなんやかんやでホント遠かったけど自室についた。

俺は書類とUSBメモリを机に置いとくとそのままベッドにダイブ。すぐに睡魔が襲ってきて俺はそれに逆らう事無く目を閉じる。


「むにゃ…ひろーが…溜まっただけだから…睡眠取れば…ずつーとか…めまいとかぁ…治るよねぇ…」


ぷっつり、とそこで俺の意識は途切れた。



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