天邪鬼の猫。 | ナノ






「…テメェなんか俺は助けたなくなかったが凛から頼まれたから仕方なく助けてやっただけだ、自惚れるなよ」


…そんなこと言われなくても分かってるし。…でも本人に直接言われるときついわー…。
俺は俯いてかいちょーが去るのを待つことしかできなかった。


「だが凛を助けたことだけは褒めてやる」


かいちょー、ほんとにあのてんにゅーせい大事にしてんだな。俺と付き合ってたときよりも大事にしてんじゃない?…てんにゅーせいがうらやましーなあ。


「…俺、襲われてんのがてんにゅーせいだって分かってたら、助けなかったかもよ?」


むかつく。俺の大事な人が、他の奴を大事にしてるとか、むかつく。

こんなことして自分が嫌われるだけって分かってても口が勝手に喋ってしまう。頭のどこかでそう口走るのを止めてるのに我慢できなかった。


「…んだと?」

「だから“篠”の大事なあの葉山凛くんが襲われてたら!葉山凛くんが襲われてるって分かってたら俺は助けなかった!!」


ゴンッ!!
骨が折れるような鈍い音が鳴る。俺、篠に頬を思いっきり殴られた。後ろに壁があったせいで吹き飛ばずに済んだけど後頭部を壁に勢い良くぶつけた。ほっぺたも頭も痛い。いや、一番痛いのはココロだ。俺、今ココロが一番痛い。


「テメェ…凛をそれ以上そんな風に言うんじゃねェ…!」

「じゃ、あっ!俺にどうしろって言うのっ!?大事な人も奪われて、勝手に変な誤解されて、好きだった人たちに嫌われてく俺は、どうしたらいいんだよっ!!」


こんなの八つ当たりだって分かってるけど、俺の日常を、幸せを、奪ったのはあのてんにゅーせいじゃん。

篠のことも、平和な日常も、全部全部あのてんにゅーせいが奪ったじゃん。
俺、黙ってるとか無理。奪われて黙ってられるよーな人間じゃないよ。

でもさ、俺の全てを奪っていくキッカケを作ったのは全部篠なんだよ?


「篠が…っ、篠があのときてんにゅーせいにキスなんかしなかったら…っ!こんなことには、ならなかった…っ!!」


涙、止まんない。最近の俺泣きすぎだ。情けない。



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